愛は絆よりも奇なり

絆 ―12― ページ13

結局そのまま話しながら送ってもらうことになっていた。

家のそばまで来て、先輩と別れようとしたときに、母様と出くわした。

「じゃあ、オレはこれでェ」

先輩が軽く頭を下げて、自転車に跨る。

「あ、待って。荒北くん、よかったらお茶でもどうかしら??」

何を言うんだ母様。

「…いや、結構デス」

「そう言わないで、娘を送ってくれたお礼だと思って、ね??」

先輩が私を見てくる。
なんとか断れ、という眼圧で。

でもこうなった母様は引かない。
娘だからよくわかる。

「…荒北先輩、よかったらどうぞ」

私の裏切りによって、先輩の顔が険しくなった。
観念した先輩は、自転車から降りる。

「……ちょっとだけならァ…」

母様がぱあっと明るくなる。
それとは正反対に荒北先輩は少しげんなりした顔だった。

「どうぞ、どうぞ」

母様が門を開けて、私と先輩は母様について入った。

リビングに先輩を通す。

「お茶と甘いものを用意しますね。…あ、荒北くんは甘いものは大丈夫かしら??」

「まァ、甘すぎなければ…」

「わかりました。Aと待っててくださいね」

そう言って母様はうちの執事と奥へ入っていった。
私と荒北先輩はリビングのソファに腰掛ける。

「チッ、ホントにろくなことなかったわァ」

「だからあたしの言うこと聞いとけばよかったのに」

「ッセ!!」

しばらくして執事と母様がケーキと紅茶を持ってくる。

「ビターなケーキなので大丈夫だとは思うのですが」

執事が先輩の前にケーキを置くと、私の方にも同じものを置いた。
それから紅茶を入れてくれて、母様は私の隣に座る。

先輩はケーキと紅茶に手をつけた。

「荒北くん、甘さ大丈夫かしら??」

「平気デス」

「よかった。それにしてもAが尽八くん以外の男性を連れてくるなんて、初めてなんですよ」

それは語弊がある。
連れてきたんじゃなくて、ついてきたのだ。

「はぁ、そうなんスか」

「尽八さんに変な誤解を与えたくないじゃないですか。彼とは穏便に結婚したいですし」

「そうよね、Aは尽八くんが卒業したら結婚するんですものね」

荒北先輩が紅茶のカップに口を付けたまま、ぶっと吹いた。

絆 ―13― 荒北side→←絆 ―11― 荒北side

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す