恋を知らないお嬢様【CS】 (ページ16)

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「なー、お参り楽しかったなー」

「そう、ね。」

「なんだよー、やっぱし、つれねえ奴だなー…」

その言葉を無視し、手元のお守りを見た。

別に、彼氏が欲しい、と特別思ったことはないのだが、せっかく恋木神社に来たのだからご利益の有りそうなものを買って帰ろう、と思ったのだ。

「あー、俺もー！」

などといい、陽も買っていた。確か、金欠だったのでは無いのだろうか。どうなっているのだ、彼の財布の中身は。

私はまた手元に目を移す。「えんむすび」と書いてある薄いピンク色のお守りだ。ちなみに、陽は「恋」と書いてある赤色のお守りだ。

様々な種類があり、縁結びにご利益がありそうなものでもざっと見て5、6種類はあったはずだ。流石は、恋木神社だ。

「なーこれ、どこにつける？」

「学校に持っていっている鞄の内側につければいいんじゃない？」

「おー！ナイス提案！」

「…どうも。」

傍から見れば、カップルに見えるのだろう。ただ、よく陽から「浮いている」と言われる(私は至って普通だと思っている)この洋服と、さっきの会話を聴いているとカップルには見えないであろう。もしそれでも、カップルに見えているというのならば、逆にすごいと思う。

そんなことを言っていたら陽と私の家の分岐点についた。

「…いや何ついてこようとしてんのよ。」

思わずつっこんでしまったのは、陽が普通に私の家の方についてきていたからだ。

「…あー、やっぱり？だめ？」

「だめよ。」

「分かったよー、俺はお家に帰って、美容室のお手伝いでもしてますよーだ。」

「是非そうしてくれると、皆嬉しいわ。」

「んだよ、つれねえ奴。」

そんな愚痴を言われながら私は1人、アスファルトに気持ちいいほど響く自分の足音を静かに聞きながら帰ったのだ。