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帰る場所 ページ12

今、私は悩んでいた……
私の目に映る光景は、6歳位の小さな女の子がブカブカの服を着て、小首を傾げている。


「おにいさん、だれ?」



その愛らしい声、キラキラと輝いて見える綺麗な銀髪、
どこまでも透き通るような青い目、肌は陶器のように白く滑らかで、傷一つ無い。


少しだけ火照った頬に大きくぱっちりとした目が此方を見つめている。


これだけなら、知らない子供だと追い出していた。
……が、その子供は奇妙なことに着ている服は朝Aが着ていたものと同じであり、その姿は幼い頃のAと瓜二つだった。



「……私の名は太宰、太宰治だ。」

「おさむ?」


聞きなれない言葉だからか、舌足らずな様子で私の名を呼ぶ。


「私の名前は、A。」



私が自己紹介をしたからか、私が訊く前に自分から名を言ってくれる。


話を聞くとやはり、この子はAで間違いないらしい。



「お兄さん、私、帰らないと。」


「……どこにだい?」


“帰る、”という言葉に反応してしまう。
Aの帰る場所は何時でも私の所だったから、


「……わからない。あのお家かもしれないし違うかもしれない。」


Aは困ったように僅かだけ眉を下げる。
その顔は他の人間には分からないほど僅かしか動かないのがAらしいと思った。



……今よりもずっと、迷子のような顔をしているから、言ってしまった。



「じゃぁ、私が君の帰る場所になろう。」


Aの目が見開かれていく。
やってしまった、今のAと私では一緒に過ごしてきた時間が違う。


突然見知らぬ場所に来て、見慣れない人にそんな事言われても戸惑うだろう、


そう思い、小さくて記憶が無いとはいえ、Aに拒絶されるかも、と。そう思うと自然と顔を下げてしまう。



……部屋の中には沈黙が広がる。
頭にあるのは後悔ばかり。



そうしてどれほど経ったのか、
長い間顔を下げていると、突然顔を上に向かされた。

・→←おまけ



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山猫(プロフ) - 夕霧さん» リクエストありがとうございます!リクエストは話の枠が足りないので続編にて作らせていただきます。 (2019年3月3日 20時) (レス) id: 78ed981431 (このIDを非表示/違反報告)
夕霧 - 探偵社で殺気全開の太宰さんが見たいです。 (2019年3月3日 20時) (レス) id: 6f35473dc5 (このIDを非表示/違反報告)
愛菜(プロフ) - リクエストで夢主がナンパされたらというのをやって欲しいです! (2019年2月28日 22時) (レス) id: f1715ab2ed (このIDを非表示/違反報告)
山猫(プロフ) - 夕霧さん» ありがとうございます!できる限り頑張って見ます! (2019年2月15日 23時) (レス) id: f0811da8b0 (このIDを非表示/違反報告)
夕霧 - この作品大好きです!続きお願いします! (2019年2月14日 22時) (レス) id: 6f35473dc5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:山猫 | 作成日時:2019年1月7日 21時

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