6話 ページ8
「もう!そんな話いいでしょ!!」
そう言うと今まで黙っていた乱歩さんは頬を膨らませ、立ち上がると私の腕を掴んだ。
「行くよ。」
私の腕を引いて足早にその場を去って行く。
後ろからは“Aーーーーッ!!”と悲痛な声が聞こえたが敢えて無視しておく。
────
──
─
ズンズンと進むその足は意外にも早くて、ついて行くのが精一杯だった。
乱歩さんはこちらを向かずに頬を膨らませたまま歩く。
「乱歩さ、」
「ねぇ。」
速いです、と言う前に乱歩さんは振り向き妙に落ち着いた声でそう言った。
「……なんで告白した男の前で初恋の男の話するのさ。」
乱歩さんはしゅん、と落ち込んだように私の手を繋いで言う。
その寂しげな様子に思わず頭を撫でそうになったが、乱歩さんの言葉を思い出してその手を止める。
「初恋って、え、?」
「……その友人って、Aの初恋の人でしょ。」
……確かにその通りだった。
穏やかなその目、優しい声、少しズレた言葉。
……けれど人の心にスっと入り込むような、そんな人間だった。
────織田作之助は。
織田作さんは私の初恋の相手であり、それは兄さんしか知らないことなのに……なんで知ってるんだ?
「……私達って何処かで会ったことありました?」
「……ないよ。」
何処か苦しげに歪められた顔が気になったが、すぐに“A、”と呼ばれたのでそちらに意識が持っていかれる。
「僕はお前のことが好きだ。」
そう言って開かれた乱歩さんの目はエメラルド色で、その目に映る色に私の心臓は鼓動を響かせた。
321人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
山猫(プロフ) - 月さん» ありがとうございます。更新が凄く遅いですがこれからもよろしくお願いします! (2019年4月7日 16時) (レス) id: 83a8e3ed22 (このIDを非表示/違反報告)
月煇(プロフ) - おもしろいです!すごく続きが気になります。あとイメ画可愛いですね! (2019年4月7日 11時) (レス) id: 5c7616bba1 (このIDを非表示/違反報告)
山猫(プロフ) - 那星月佳さん» ありがとうございます!そう言って貰えるとどちらも作りがいがあって嬉しいです! (2019年3月10日 23時) (レス) id: 78ed981431 (このIDを非表示/違反報告)
那星月佳(プロフ) - イメ画とっても可愛いです!作品の内容も面白くて好きです! (2019年3月10日 22時) (レス) id: 25acefb684 (このIDを非表示/違反報告)
山猫(プロフ) - らくろさん» ありがとうございます! (2019年3月10日 12時) (レス) id: 78ed981431 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:山猫 | 作成日時:2019年3月5日 20時