le petit cadeau (ページ10)

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急いで玄関から出ると雨が降っていた

いつか国語の授業で習った
［まるでバケツをひっくり返したかのようだ］
という表現にぴったりあてはまるくらいの雨

天気予報確認しなかった私は傘を持っていない

駅まで10分、仕方ない、と
これから靴や靴下も濡れる覚悟をした所で
先輩が遅れてやって来た

JS「雨降ってるね」

『もしかして傘持ってたり…』

JS「ない」

『…走ればいけますよね』

仕方ない、ここは覚悟をきめて

JS「…ちょっと待ってて、買ってくる」

『え、あ、ちょっと！』

私が言う前に走って行ってしまった

一緒にと思ったが

先輩が速くて追いつかずまた図書館まで戻る

それから10分
先程より雨は弱まってきたが
まだまだ止むことはない

秋の夜は肌寒い
冷たい風が吹いている

それに

図書館の明かりが消え、
なんとなく、ほんの少しだけ心細く感じた。

遠くから歩いてくる人影

傘をさした先輩だ。

あれ？
傘１つ足りない？

JS「待たせてごめんね

傘ひとつでも良いかな」

『そんな！全然です！…本当にすみません』

こんな雨の日だから
傘が売り切れてる所が多いのかな

JS「気にしないで、行こ」

駅までの道のりを歩く

雨で濡れた道路は
街灯の灯りを反射し
きらきらと光る

傘にあたって弾ける雨の音

時折通る車から守るように
私に寄る先輩の肩は濡れていた

さりげない気遣いに
またひとつ心が高鳴る

変に意識してしまうのはこの傘のせい

2人が1つの傘をさす
これを世の中では"相合傘"と言う

ドラマや映画や少女漫画のワンシーンによくある、アレ

JS「相合傘だね」

『そう見える、かもしれませんね』

JS「僕ね、実はちょっと憧れてたんだ」

『好きな人にするべきですよ？』

JS「よく見るドラマのシーンはさ

　もしかしたら意図的かもしれないね

　僕も好きな人にしかやりたくないと思うよ？」

彼と目線が合う

恥ずかしくなって私は目を逸らした

それから会話は無いまま、
最寄りの駅に着いた

『本当にありがとうございました』

『あの、』

JS「Aちゃん」

　「ここで今

　僕が君のこと好きだって言ったらどうする？」