le petit cadeau (ページ35)

今日:12 hit、昨日:5 hit、合計:36,376 hit

4 ページ35

推しに出会ってから2年が経ち、
私は高校3年生になりました。

高校3年生、そうです。大学受験が近づいて来ました。
冬季講習やら何やらで忙しい毎日を送っています。

今はお昼休憩、息抜きができる貴重な時間
各自動画を見たり、寝たり、友達と話したり、
日頃の勉強で溜まったストレスを発散しています。

「推しが尊い」

『カッコいい人だね』

「存在するだけで幸せを供給してくれるのよ」

親友が見ているのは、人気のアイドルのライブ動画
彼女には推しがいて、今度のライブも参戦するそうだ。

動画が終わり、片耳に付けていたイヤホンを外して私を見た。

「そういえばさ、あの先輩今何してるの？」

『あの先輩？』

「いつも目で追ってた先輩、目が切れ長で眼鏡かけてて」

『え、気づいてた？』

「そりゃあね、」

『密かに推し活してたのに…バレてたか』

その時彼女は目を丸くさせた、
推しだったの？好きな人じゃなくて？と

『え…？推しだよ』

「だっていつも会釈するたびに耳真っ赤にして、
　2つ上の先輩のフロアに行く度にキョロキョロしてたし」

「どっからどう見ても恋してる乙女の目だったよ、」

『…』

「おーい、A？
　…あれ、混乱させちゃったかな、」

"推し"って何でしょうか

彼を見るだけで幸せになって、毎日が楽しかったし
廊下ですれ違う度に心がざわついて、

遠くから彼を見るだけで良かったのに

私をもっと見て欲しいと思う気持ちを
"推し"に持つのは自然なことですか？

あれから少し混乱しつつも
そのことは頭の隅に追いやってひたすら勉強しました。

そしてそのまま"推し"の定義があやふやなままに
受験を終えて、大学生になりました。

「それでね、そのサークルの先輩と
　連絡先交換しちゃったの！」

『すごい！』

大学で仲良くなった友達と、駅前のカフェに来ました。
そこで女子の話す事といえば勿論恋バナです。

「で、今度先輩2人と私と私の友達で
　4人でドライブしに行くんだ〜」

「なんかもう推しじゃなくて、完全に好きな人なのかも…」

『そうなんだ』

推し…好きな人…
それを決める定義が分からなくて、色んな考えが
また頭の中をぐるぐる回りました。

嬉しそうに話していた友達は
「Aはいるの？好きな人とか…」

『うーん、好きな人か…』

答えに悩んでいた時…ふとカフェに入ってきた
背の高い男の人が目につきました。