le petit cadeau (ページ34)

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色んな考えが頭の中でぐるぐる回る

部屋のドア開けてたけど、
机の上にメイク道具散乱してたの見られた？
パジャマ椅子に掛けてたよ？

着替えてたとき、隣の部屋に推しがいたってこと？

叫びたいけど、声に出せないので
柔らかいクッションを抱きしめて抑えました。

『…やばい、』

急いで机の上に倒して置いていた鏡を起こして
準備に取り掛かりました。

そんな聞こえるわけ無いのに物音は最小限にと
心掛けるも、私の心臓は大きな音を立てていました。

フェイスパウダーを出し、いらないテカリを抑えて、
ほんのりチークと、新しいリップを塗って…

…睫毛もやるか、

ビューラーで軽く上げて、マスカラは流石に
気合い入ってます感出るから今回は断念

前髪を櫛で梳かして、再度鏡で念入りにチェック

やり過ぎ？

いやいや、推しに会うかもしれないのに
戦闘態勢とらないでどうするA、今こそやるのだ。

最後に目に入ったのは、馴染みのキャラクターが
書かれたヨレヨレのスウェット

これは着替えなければ、

気合い入ってませんよ、家でくつろいでますよ感が出て、
尚且つ推しに会っても大丈夫な服…

「Aどうしたの、」

『いや、なんとなく…』

「そう…さて、ご飯にするかな
　お兄ちゃん達まだ勉強するみたいだし」

お母さんの目は騙せなかったが、深掘りはされませんでした。

戦闘態勢をとったとはいえ、ベストなのは会わないこと
このまま何事もなく終わって欲しかったのに…

WN「お邪魔してます」

「良かったらご飯食べてく？」

SN「え、良いんですか？！食べたいっす！」

JN「食べよ〜」

「A、カレーあっためてきて」

『…はい』

私の予感は大当たりして推しが家にいたことが分かり、
更には同じ空間でカレーを食べることになってしまうハメに…

幸せなんだか、恥ずかしいんだか色んな感情で忙しくて、
カレーの味が１つもしませんでした。

その日、彼の名前はチョン・ウォヌであることを知り、
ジュンの妹であると認知されました。

それからは廊下ですれ違う度に
軽く会釈する程度の挨拶をするようになりました。

それだけだけど、
それだけで、心が満たされたのです。

…でも少しだけ、
その幸せの裏に私の知らない欲求がある気がしました。

推しと私の関係はそのまま変わることなく
推しは高校生活を終えて大学に進学しました。