le petit cadeau (ページ23)

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A"n" Fair SC ページ23

「…俺に水ぶっかけてください
　正気に戻れるように」

彼の真っ直ぐな目が私を離さなかった

それに映るのは
焦り、怒り、悲しみ、

果たしてそこに愛も含まれるのかは
知りたくもないこと

『…何言ってるの』

ああ、ついに
この時が来てしまった

恐れていた時が来てしまった

やめて、

「先輩に俺の事見てもらおうと
　カッコつける自分が馬鹿みたいで、

　

　あんな事されて何も言わない先輩と
　あのクズにも腹が立つし

　アイツが外で良い思いしてる間に
　今にも泣きそうな先輩を
　抱きしめたくてもできない自分に嫌気差して

　…っ、もう疲れました」

やめて、お願いだから

『…、早く帰って寝なさい』

「先輩！」

もう、何も言わないで

「マジで俺何してんだろって…

　だから先輩、

　俺の事っ、殴っても良いから
　正気に戻して下さい

　お蔭で辛くて死にそうなんです
　もうこれ以上は、

　耐えられないんです」

ここ数ヶ月、
薄々感じていた彼の気持ちに
気づかないフリをしていた

しかしこの一言によって
私の努力も、彼の努力も全て塵となった

『…馬鹿』

「馬鹿で悪かったですね、
　先輩のことしか見えない馬鹿でっ！」

『お願いだから、私の事はほっといて』

「それができたら苦労してないっつってんだよ！」
　

静かな街に響く怒鳴り声

心の叫びを私にぶつける彼は
息が切れ、顔も紅くなっている

「っ…、好きなんです俺」

「正気に戻れば
　先輩に会いたいとか好きだとか
　そう思わなくなるはずです」

「…俺が入る隙が無かったら、
　あんな男に引っかからなかったら、
　先輩が苦しまなかったら、」

不平等過ぎませんか、