le petit cadeau (ページ16)

今日:10 hit、昨日:5 hit、合計:36,374 hit

2 ページ16

『終わった？お疲れ様』

何年か前のドラマの再放送を見ながら
ソファでくつろいでいた彼

『こっちどうぞ』

隣にずれて私が座るスペースを作ってくれた

「このドラマ懐かしいね」

『ね、これAの』

「ありがと

　…やっぱりドギョムのコーヒー美味しい」

嬉しそうに笑う彼

コロナで家にいる時間が長かったとき、
これを機に何か始めてみようと
新しい趣味を探して見つけたのがコーヒーである

すっかりハマって、今は本格的になっている

『ふふ、作り甲斐があります』

『あとスコーンもあるよ、
　今日仕事先のお客さんから貰ったの』

「午前中の仕事お疲れです」

『ありがと、朝ごはん食べた？』

「うん、美味しかったよ、朝から作るの大変だったでしょ」

『全然？』

朝早かった彼は私の分まで朝ごはんを作ってくれていた

ウインナーと少し焦げた目玉焼き
おまけに、"おはよう！いってきます！"って
書かれたメモがついていた。

『…あ、』

ちょっと待ってて、と何か思い出したように
彼は立ち上がり
冷蔵庫から苺ジャムを持ってきた。

『こういうのテレビで見たことあるよね』

スコーンにジャムを少しつけて食べる

そして一口

「美味しい…」

『わ…おいしい、ジャム持ってきて正解』

甘いスコーンの後
苦いコーヒーを飲む

「…疲れ吹っ飛んだ」

『魔法かけたもん』

「…やっぱり？」

「…いつもごめんね」

口から素直に出た言葉、
暗い雰囲気にさせてしまっただろうか

ドラマを見ていた彼はこっちを向いて
優しく笑った

『ふふ、わかってないなAさん』

『支えるのが僕の役目だもん』

「…うん」

『いつでもコーヒー淹れてあげるし』

こういう時はコーヒーと甘いものが1番だよ、と
彼らしい言葉が

私の中に溜まっていた疲れを一つずつ溶かしていく

「おいしいね」

『ね』

彼は、もう一個食べちゃおうなんて
また１つスコーンを手に取っていた

「晩ごはん食べられなくなるるよ？」

一瞬ぴたりと止まった彼

少し考えてから
ジャムをスコーンに付けはじめた

『ダイエットやめるから、いくら食べても大丈夫
　今日はたくさん食べる日なの』

「そ？」

『…この俳優さんの髭いいなあ』

「…」