le petit cadeau (ページ14)

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まだ静まることを知らない0時過ぎの繁華街

これから二次会に向かう
サラリーマン達とすれ違いながら

ふらついた彼女を連れて駅まで向かう

できるだけ彼女に触れる面積は少なくして、
肘だけ掴んで支える

「今日は楽しかったなあ」

『ん』

「…仕事に戻りたくなーい！」

『しっかり歩け』

「仕事なんてどっかいっちゃえ〜！」

『働けあほ』

きっとこれが本心だな

冗談を交えて、笑いに換える

悩みを軽くするための
優しい彼女ができる最大限の方法

『…こっち』

水たまりがある方から
乾いた歩道の方へ誘導する

「…ありがとジフナ」

赤い信号が青色に変わるのを待ちながら

彼女はこちらを見ずにそう言った。

『濡れたら面倒だから』

こっちを向いた彼女は
静かに笑った

「…まだかな」

『もう少しだろ』

人の少ない駅のホームに着き
次の電車を2人で待つ

少し夜風にあたって歩いてたから

だいぶ酔いが覚めた彼女は
先程のような甘ったるい少女の空気では無く

落ち着いた大人の空気を纏っている

俺はもう既に彼女から手を離している

「ジフナありがと」

『何が』

「…素直じゃないなあ」

車内の端に寄って
立って最寄り駅に着くのを待つ

彼女が頑なに座ろうとしないので
仕方なく立たせたままに

「わ、」

ふたつめの駅を発車した途端、揺れる車内

まだ酔いが覚め切っていない彼女は体勢を崩した

咄嗟に腕を伸ばして支える
一瞬本当にひやっとした

彼女はこんなに細かったか

「ごめんごめん」

はあ…気を抜けないな

彼女の腕から手を離そうとしたその時、

彼女は俺のシャツの袖を掴んだ

「…。」

彼女の綺麗な瞳が俺を見つめる

参ったな、

『…期待させんなばか』

「…あ、ごめん」

はっと気がついたように
離そうとした彼女の手を握る

酔ってるのかな

彼女の方を向くことはできない

　

何も話さず、駅に着くのを待った

小さく握り返してくれた彼女の手を
離さないまま