きゅーけー中編集

・ ページ34

そんなことしても河村さんは優しいトーンのまま

「川上が頑張ってるからだよ。裏方として誰よりもメンバーのこと考えて、一生懸命仕事して、みんなを影で支えて。いつも頑張りすぎなくらい頑張ってる。だから褒めるの。川上が弱いんじゃ無いよ。誰でも疲れちゃう時がある、ダメだってわかっててもやっちゃう時がある。だから大丈夫。川上は十分すぎるくらい頑張ってる。自分を褒めていいんだよ」

優しくそう言われて涙が出そうになる。
「最近ね、川上が頑張りすぎちゃってる、大変そうだってみんな言ってたの。ふくらも須貝さんも、山本もこうちゃんも心配してて。そして誰よりも伊沢が一番心配してた。みんなどうにか川上を助けてあげれないか、って集まったらそればっかり話してたの。みんな川上の全部受け止める覚悟はできてるよ。だからさ、話してみない？川上が何に苦しんでるのか、そしてさ、みんなで協力してなおしていこう。」

みんな待ってるよ、そう言われて、河村さんに促されてそっと扉の方を見ると、ガラスの向こうでみんな心配そうにそわそわとしていた。伊沢さんと目が合う。すると不安そうな顔をしていた伊沢さんが覚悟を決めたように僕をまっすぐ見つめて「大丈夫」と口パクで伝えてくれた。

いいんだろうか、くだらないって一蹴されるんじゃ無いか、不安がよぎるけど、でも伊沢さんのまっすぐな瞳を見て、この人たちになら伝えられるんじゃないかと思えた。

「…かわむらさん。」
「なに？」
僕もちゃんと自分と向き合わないと
「みんなにちゃんと伝えたいです。でも、ちょっと不安だから…隣に、居てくれますか」
「もちろん」

少し怖いけど、河村さんが隣にいる。河村さんがアイコンタクトを取ると、みんながそっと撮影部屋に入ってきた。その視線に思わず俯く、手が震える。でも河村さんがそっとその手を握って、大丈夫と声をかけてくれる。覚悟を決めて顔をあげる

「…助けて、ください」

絞り出せた言葉はその8文字だった。でも
「もちろんだよ。聞かせて川上のこと」
伊沢さんがそう答えてくれる。きっと大丈夫だ。この人たちになら全部打ち明けられる。

・→←・

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す