略奪i は泥棒の十八番

伝うは ページ8

ｻｸｯ…




A( ……… 変なの… )







厨房に立ち、付け合わせのサラダを刻みながら

Aは 先程から感じる 心の違和感に悩んでいた









A(何でこんなに モヤモヤするんだろう…


……… 前にもあったような…)









客A「ｺﾗｯ！ 喧嘩してないで ちゃんと食べなさい！」


娘「だってお兄ちゃんが ｱﾀｼのお肉取ったんだもんー」









A(……… あぁ、そっか…



" 何か大切な物を取られた" 時の気持ちだ…)







その答えに 納得すると、再び 眉間に皺をよせる









A(… じゃあ、今回は？



別に何も取られてないし、そもそも大切な物って……… )









…





……… ｻﾞｸｯ









A「ｯｯ… 」









急に 鋭い痛みが指から伝わり、

痛みに続いて 部分的な熱さがじわじわと感じられる









A「ったぁ… 」









そう呟いて 視線を落とすと、

人差し指から一本の赤い線が伸びていく









A「っと……… 」









伸びていく赤線が、サラダまで達する前に指を持ち上げるA









ｽｯ…






……… ﾊﾟｼｯ









A「!?」








ｽｩ… ﾊﾟｸｯ









ﾊﾞﾝ「ﾌﾞｧ〜ｶ ♪」









持ち上げ終わる前に Aの手は 掴まえられ、

そのまま更に持ち上げられると 丸ごと指がくわえられる









流れる血液を軽く吸ったバンは、

最後にﾁﾛﾘと舐めると 指を離して 告げる









ﾊﾞﾝ「ｵｲｵｲ、 何 ボーッとしてんだよ♪」









ニヤリと笑うバンの顔を見るや

頭の中に先程の言葉が蘇る






.









ﾊﾞﾝ『ｶｶｯw



おい、待てよ エレイン……… ♪』









.









A「……… ｪｲﾝ…」





ﾊﾞﾝ「あ ?

メイン? … あぁ、こっちの肉な♪ 」









バンはそう言って 指を離すと

すぐさまコンロの火を付けだした









ｼﾞｭー…









.







A「………ねぇ」




ﾊﾞﾝ「あ〜?」




A「熱い

火、強すぎるんじゃない？」





ﾊﾞﾝ「はぁ？ んな強くねぇy……… って、お前…」




A「?」









ﾂｩ…









ﾊﾞﾝ「 お前、何泣いて…」






そう言われて 始めて頬を伝わる涙に気づくと

伸びてくるバンの手を振り払って Aはその場から走り去るのだった…









【５８話 伝うのは " 赤い線か涙の線か "】

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