【ntj組】店員様は女神様。【pn】 (ページ10)

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　かなり思案したが、処分しないのも気味が悪い。封筒だけを手に取ってひとまず自室へ帰宅した。
　リビングまで立ち入り、テーブルの前の椅子に腰掛ける。カーテンを開いた先は闇の中。封筒を目の前に置き、逡巡して、そっとカッターで封を切った。
　案の定、その中には数多の便箋が入れられていた。以前見かけた時よりも数が増えている。その一枚一枚から執着を感じ、全身に悪寒が走った。
　

　〈敬愛なる女神様
　女神様のことを想うと、何をしようにも手につきません。僕の信仰心は膨れ上がるばかりです。
　貴方のご尊顔をもう一度拝むことが出来たなら、僕はどれほど幸せでしょう。女神様の御要望に歯向かうことをお許しください。もしお許し頂けるのなら、誠心誠意贖罪致します。僕は女神様を

　文字を追っていた目をとめ、便箋を握り潰す。静かな空間に、紙のこすれる音だけがよく響いた。残りの分はまだあるが、良くて資源ごみ行きだろう。

　内容についてはもはや触れたくない。それよりも、私が彼を帰宅させてからの数時間でこの膨大な量の執筆をした事、そして何よりそれが自宅のポストに投函されていた事が堪えて仕方が無い。当然つけられていた意識なんてものはなくて、恐怖が脳内を支配した。

　帰宅してすぐに調べたとは考えにくいし、前から私の住所を特定していた事になる。店長に紙袋を預けた段階で、彼は私の友人と名乗れるほどの情報を持っていたのだろうか。声をかけられた時、あるいはそれよりも前。私が彼を知るよりも先に、彼は私を知っていたのかもしれない。むしろそれを知っていてバイト先に現れて、だとすればどこで、私のどこまで、何もかも？

　頭が上手く整理出来なくて、腹いせに何度も手紙を握る。それでも文字は消えてくれなくて、部屋の全てのカーテンを閉めたあと、玄関の施錠も確認した。
　変な客から得体の知れないストーカーに、彼の印象が切り替わった瞬間だった。