【魔d!】私は美味しくありません

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私の様子の変化に気がついたのか、チーノくんは後ろを振り返る。ショッピくんの鋭い眼光を目の当たりにし、彼の肩が一度、びくりと震えた。

「うわっ、びびったぁ⋯⋯だ、誰です？」

　チーノくんの問いかけに対して、ショッピくんはそれが聞こえなかったかのように無視をして、ずかずかと私に近寄った。混乱して目を回していると、ショッピくんは怪我をしていない方の私の腕を掴むと、引っ張りながら勢いよく上空へと身体を浮かせた。

『ちょっ、待って⋯⋯！』

　高度が上がるにつれ、私の身体も浮いていく。爪先立ちになった足は呆気なく地面を離れ宙吊りにされ、空気中に放りに出されたような感覚になった。重力に引っ張られ、肩がミシミシと音を立てる。関節が外れてしまう前にと慌てて私も翼を広げ、スピードを遠慮なく上げる彼に負けじと、どうにかバランスを取る。

『しょ、ショッピくん、何なの！』

「⋯⋯何なの、はこっちの台詞っすよ」

　大きな翼をはためかせ、ショッピくんがぴたりと止まる。唐突にスピードが落ちたことでよろめきつつ、私もその場に留まった。腕はまだ掴まれたままで、解かれる気配もない。

「俺に怯えてるのは構いませんよ。顔青くして、アホみたいにぶるぶる震えんのも」

　酷い言われように反論したかったが、場の雰囲気がそれを許さなかった。俯いたショッピくんの顔は伺うことができない。

「でも、他の奴にあんな事するんやったら話は別や」

『⋯⋯あんな事？』

「これや、誤魔化しても無駄ですよ」

　そう言って、ゆらりと伸びた手が私の片腕を掴む。乱暴に捕らえられた腕が捻られ、傷口が露わになった。血は止まっているものの、まだできたばかりのそれはじくじくと痛んでいる。

『い、ッ⋯⋯』

「"人間の血は、悪魔にとって癒しになる"⋯⋯そうやろ？」

　はっと顔を上げると、ショッピくんは意地悪げに笑った。

「やっぱり。近所の奴が噂してたんは本当だったってわけですね。あんたが姿消してから、俺なりに調べとったんですよ。お陰で空想生物学だけは詳しくなってもうたわ。
　あんたは悪魔で人間ちゃうし、親か先祖が人間とか？ それとも、ほんまの人間はあんたみたいに飛べたり、しょぼくても魔術使えたりするんすか？」

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