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やっとの話 ページ33

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期末試験も近づいた秋。

彼の家で問題を出し合って試験対策をする。
歴史にめっぽう弱い私のために、たくさんヒントを盛り込んで問題を出してくれるが全くついて行けなくて、もうダメだと机に突っ伏した。
漫画なら頭から煙が出ているだろう。



初めはスパルタだった彼も、私の歴史への拒否反応のレベルを目の当たりにして心底呆れたようで、まるで5歳児に教えるかのごとく、一つ一つ丁寧に説明してくれたのだが、申し訳ない。









真夏に焼けた肌も落ち着いてきた彼は、整った顔を教科書に向けていて、いつもより大人びて見える。

ベージュのカーディガンを着ながらシャツのボタンを3つも外したその姿は色気がダダ漏れで、いつもならば寒いのか暑いのかどっちかにしろと憎まれ口を叩くところだが、今日は少しだけ甘えたくて、勉強に疲れたという口実を引き下げてその胸にダイブした。







「………どしたん」

『歴史きらい』

「もう諦めるしかないやろ」

『んーーーー』

「休憩するか」







冷蔵庫に飲み物を取りに行った彼の背中を見送りながら、その一瞬でさえ行かないでなんて思う自分に驚く。

背もたれにしていた彼のベッドに顔を埋めてみても、ノートに書いてあるお世辞にも上手いとは言えない字をなぞってみても、どうにも今日は甘えたくて、早く帰ってきてよと小さくため息をついた。





ふと顔を上げて目に入ったサッカーボール。
普通のよりも小さなそれには、一面に文字が書かれていて、彼の部屋の一角に大切に飾られている。
おそらく中学の部活の引退時にもらったものだろう。

この家にももう何度も来たけれど、そうえば今まで見たことなかったなーと立ち上がって読みに行くと、ありがとうございましたとか、これからも応援してますといった後輩たちからのメッセージがぎゅうぎゅうに書いてあった。
そして、男子ばかりのサッカー部からの贈り物とは思えぬ量の、女子の文字と名前も目に入る。





廉先輩かっこよかったです
廉先輩に憧れてました
廉先輩の高校目指します






廉先輩か……






大量のメッセージを見たところで思い出されるのは、先日目撃した彼のファンクラブのこと。
今まで何とも思っていなかったのに、なぜか最近、無性にモヤっとする。

でも、私はその理由に気づいていて、そこのハードルさえ乗り越えればきっと彼にももっと素直になれることも分かっているのだ。






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名無し - 一気読みしました!主様のペースで良いので更新待ってます (2020年12月12日 21時) (レス) id: 492fd25da1 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぴこ(プロフ) - あこさん» お返事遅くなってすみません!少し生活面が落ち着いてきたので、これから更新できればと思います!少々お待ち下さい(^^) (2020年3月11日 18時) (レス) id: 1c0a7a2bdd (このIDを非表示/違反報告)
あこ(プロフ) - めちゃめちゃ続き気になります!更新楽しみにしてます! (2020年1月5日 2時) (レス) id: 105c11924c (このIDを非表示/違反報告)
ぱぴこ(プロフ) - 愛美さん» コメントも評価もありがとうございます。嬉しいお言葉ばかりで私がニヤニヤしてしまいました…!番外編のくせに長々と続いておりますが、もう少し書きたいので、これからもよろしくお願いします! (2019年12月15日 21時) (レス) id: 1c0a7a2bdd (このIDを非表示/違反報告)
ぱぴこ(プロフ) - しおりさん» ありがとうございます!ノロノロ更新ですが、これからもお付き合いお願いします! (2019年12月15日 21時) (レス) id: 1c0a7a2bdd (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぱぴこ | 作成日時:2019年7月25日 0時

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