一本道で迷子 (ren.n) (ページ20)

今日:1 hit、昨日:4 hit、合計:231,021 hit

真夜中20回目ページ20

.

やっと落ち着いて冷静を取り戻し、初めて自分の状況に気づく。

……………やってしまった。

『パーカーありがとう』

「ほんまにな。仕方なかったとはいえ俺やなかったら襲われとるで」

『ほんと無我夢中だったからさ…』

「髪、学校やったら上だけ結んどるやん。
やから最初誰か分からんくて」

『ハーフアップっていうんだよ永瀬くん』

「なんやこいつ露出狂か思ったらお前やん」

『ほんとすいません。ありがとうございます』

寝苦しい夏の夜だ。私は寝ようとしていたのだ。
タンクトップにショートパンツという、いつもの睡眠スタイルでそのまま出てきてしまっていた。
髪も結ばず自転車で猛ダッシュしてきたから乱れまくっていただろうし、確かに薄気味悪い露出狂に見えただろう。

「まだ好きなん？先生のこと」

『………正直よくわかんない。
別にお姉ちゃんを妬ましく思ったことないし、2人はお似合いだし幸せになって欲しいし』

『2人が付き合ってるって聞いたときはまだヘラヘラ出来たけど、婚約したときは本気でへこんだし、同棲始めちゃうし…
気持ちがついていかなくて、よく分かんない』

「俺さあ、1年の夏休み明けの放課後にお前が泣いてるところ見てしもうて…
誰もおらん教室で夕日浴びてグズグズ泣いとったし、石井に聞いたら失恋拗らせとるって言われたし。
それで初めて話したとき、こいつ失恋する自分に酔っとるだけやな～って思ってつい言ってしもたけど…
ほんまごめんな」

『え、やめてよ。それはお茶でチャラになったじゃん。
それに今、本当に助けられてるし、感謝してるよ。
泣いてるの見られたのは癪だけど。』

「今日は泣いてないな。嫌な思いしたんに」

『なんだろう。
今日はビックリしただけなんだよ。
それに、話聞いてくれる人がいるし』

なぜだろう。
麻里に話してもウジウジしてしまうだけなのに、今永瀬くんに話していると心がけてスッキリしていく。

静かな夏の夜は、いつもは隠す胸の内をさらけ出させてしまう。
温かな夏の夜は、少しずつ少しづつ、心を溶かしていく。

真上に見える星空がとても眩しかった。

.