3(side翼) ページ3
海でみんなと体を動かして遊ぶのって、やっぱり楽しいなぁ。
チラッと横目に、Aさんを確認。
今はチーム対抗ビーチバレー。
俺は彼女と同じチーム。
「おい翼！前見ろ前！」
へっ？
言われた通り前を見ると、目前にボール…激突。
驚いて体制を崩し、砂に足をとられる。
傾いた体は、そのまま誰かを巻き込んで倒れ込んだ。
いい匂い。柔らかい触感。
起きようとして手に力を込めると、砂ではない触り心地。
「いたた…」
高い声に気づいて、顔を上げてみると…Aさんのがあった。
「おい大丈夫か？翼ー…」
周りのみんなが駆け寄って来て、ハッとする。
今俺は、Aさんの片胸を揉んで馬乗り状態。
急いで離した手を背中で組むが、みんな固まってしまっている。
Aさんの上から退くと、彼女はゆっくりと起き上がろうとして、近くにいた硲さんが支えて座った。
「ごっごめんなさい！痛かったですよね！しかも俺…ごめんなさい！本当にごめんなさい！！」
「あ〜事故事故。大丈夫で…いてて」
様子を見ていた桜庭さんが来て、問診が始まる。
「左胸か…心臓が近いな。」
「あ、内部はそんなに…その、たぶん手がぶつかったので、表面が痛いだけで…うちみかなんかじゃないでしょうか。」
手って…俺が、ももも揉んだ手？？
どうしよう…俺がよそ見していたばかりに…うぅ…
「柏木、お前が泣くな。被害者はAだ。」
「被害者って桜庭…」
「元弁護士ならすぐわかるだろう。」
あー待ってください！ケンカしないでください！
俺がいけないのは合ってますから〜！
「とりあえず様子を見て、何か気になったら言ってくれ。」
桜庭さんにお礼を言った彼女は見学することになり、俺も気が気じゃなくて見学することにした。
「翼さんってば、意外〜！」
「ラッキースケベっていうか…」
「え、翼っちまさか…！」
高校生達がからかってくるので、疑いをかけられないうちにと、必死に彼女に頭を下げる。
でも謝りすぎて半べそかいている俺は、また怒られる。
彼女を困らせるだけだと。
安静にさせるために、少し離れたところに座ると、山下さん達に慰められた。
痛いのはAさんなのに…
なのに…なのに俺の手には、身体には、まださっきの感覚が残っていて、その部分が火照る。
彼女の香りが消えなくて、忘れられなくて……
たしかに、こんな状態で謝られても迷惑かもしれない。
まさか俺が、こんなにも…どうしようもなく……
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作者名：ナイン | 作成日時：2018年10月9日 9時
