Myosotis scorpioides【A3!】 (ページ32)

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さんじゅう㌻ページ32

花の水やりも無事に終わり、一息ついて二階の廊下を歩く。

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すると、どこからかドタバタと足音が聞こえてきた。

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え、何...！？

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そう思うよりも早く、目の前を誰かが横切った。

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反射的に振り向くと、そこには壁を走る紫色の...人...！？

「な、っ...！！」

異様な光景に声も出せずにいると、さっき部屋を見に行った人達がいつの間にかこちらに来ていた。

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「すげー！壁走ってる！」

「なんて身体能力だ...」

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「あっ、Aちゃん！」

ふと、いづみさんの声が聞こえて私の脳は冷静さを取り戻す。

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いづみさんの元に駆け寄ろうとした瞬間____紫色の髪の人と目が合った。

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___ふわり、

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壁を蹴り、飛び上がってこちらに向かって来る彼の動きが全てスローモーションに見えた。

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「____！！」

「さんかく、みっけ～」

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視界いっぱいに紫が広がる。

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目の前に彼がいた、しかも鼻と鼻がくっつくくらいの至近距離。

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一瞬何が起こったか、分からなかった私は目をぱちくりさせることしかできない。

目の前の紫くんは、ふにゃりと笑うと

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「このさんかく、もらってもいい～？」

私のさんかくのピン留を指差した。

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「...ど、どうぞ...」

状況が掴めず、困惑していた私は流されるままそう言うのが精一杯だった。

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「ありがと～」

彼はそう言うと、優しく私の髪からピン留を引き抜く。するとそのまま飛び上がって、一階に下りていった。

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他の人もその後を追いかける__足音をぼうっと聞きながら私はその場に立ち尽くした。

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他意が無いとはいえ、男の人にあそこまで近づかれたのは生まれて初めてで。

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「～～っ、」

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なんだか照れ臭くなって、熱くなっていく頬を抑えた。

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「Aちゃん！大丈夫～？」

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いづみさんの声で我に帰る、私は頬を叩くと階段の側で心配そうにこちらを見つめる彼女の元に駆け寄った。

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それから、紫くん____斑鳩三角さんが夏組のメンバーになってしまうのはこのすぐ後の話。