疑われるのは覚悟しておりました【名探偵コナン】※トリップ

FILE.4 鏡の前の別人 ページ4

目の前の沖矢さんに気を取られてすっかり忘れてた。


名前すら思い出せないのに、家の場所なんてわかるわけないじゃん！！

そもそも私この世界に家なんてあるの？
人間関係は？





「どうかされましたか？」



『い、いえ...』



沖矢さんの鋭い視線を感じながら、
この後のことをひたすら考える。


どうする....家があるかすらわからないのに、
沖矢さんを家にあげるなんて言っちゃったし...

適当な場所行ったってきっとすぐバレる。



ていうか
なんで沖矢さんそんなに私に執着するの？

死のうとしてたところを止めて話するくらいならわかるけど、私は所詮一般人なわけで、
赤井さんが私に構う暇なんてなさそうなのに...

もしかして私変なことした？


いや、それよりも今どうするかを考えないと。

とにかく自分の事を把握したい。
身元がわかるものとか持ってないかな...



『ごめんなさい、ちょっとトイレに...』

「わかりました。ここで待っていますね。」

『はい、すぐ戻ります。』






『ふぅ....』

やっと一息つけた...
沖矢さんといると変な緊張感があって気が抜けないしな...


誰もいないことを確認して個室に入り、服のポケットや手に持っていたバッグの中をひたすら探る。


幸い、スマートフォンや手帳、財布などの情報源となりそうなものがたくさんあった。



まず、本名は坂凪千春。

年齢は22歳。


職業については情報が無かったけど、財布の中身や一緒に入っていた通帳から、働かなくても一生贅沢な暮らしが出来るほどの大金持ちだとわかった。

両親は幼い頃に亡くなっていて、一人っ子。
今は米花町で一人暮らしをしているらしい。

住所を見る限り、ここからそう遠くはなさそうだ。




つまり、まあ....現実世界の自分とは別人ってことね。


この大金の出処が気になるけど...

とりあえずそれは後。



手洗い場の鏡で容姿も確認した。

サラサラストレートの長い髪は銀色に近い茶色をしていて、顔は自分でも驚くほど端麗で、絵に書いたような美人だった。

やった。


その場しのぎではあるが、生活環境などは全て把握し、住所を覚えて急いで沖矢さんの元へ戻った。


『お待たせしました。』

「いえ。」

『家まで案内しますね。ここから歩いて10分くらいなので。』

そう言って歩き出すと、

「ここから10分...ですか。」

と探るように聞いてきた。

『...何か問題でも？』

「いえ、私の家もここから10分程の場所にあるもので。」

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