ロゼッタ２ (ページ4)

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「彼氏を寝取られたっていうのに随分とキゲンがいいのね」

そう言ったのは、あの日私にあの写真を送ってきた元カレの浮気相手の女性。
なんの因縁か、クリスマスイブに鉢合わせするなんてついてない。
足は止めたけれど会話をするつもりもないから通り過ぎようとしたら、ケーキの箱を持つ手を掴まれた。

「…まだ何か？」
「別に。ただアンタが今どんな顔をしてるのかまじまじと見てやろうと思って」
「……失礼します」

関係ないと踵を返そうとしたら振り払われた手。その拍子で箱を持つ手が離れてしまい、箱は地面へと落ちてしまう。
何故か彼女は苛立っている様子で、私をキッと睨みつけている。

「アンタと別れさせたのに、あいつってばアンタのことばっか口にして本当にムカつく。アンタ何なの？もしかして隠れて連絡でも取ってるんじゃないでしょうね」
「そんなの知りませんよ。心配しなくても連絡も取ってないですし、もっと自分に自信を持ったらどうですか？」
「っ、取られた女のくせに」

突然手を引かれて後ずさった私と、地面に落ちてしまった箱を拾い上げる誰かの指先。いきなりの事に驚いて振り向くと、そこにはなぜか息を切らした松村さんがいて、私を一瞥した松村さんは私を自分の背中へ隠すように前へ出る。

「彼女に何か？何も用がないなら失礼します」

いつもより声のトーンを低くした松村さんは少し早口口調でそう言うと、私の手を引いたまま歩き出す。そのままつられるようにして歩く私には、今の松村さんの表情は見えない。

家に入るまで手は繋がれたままで、「松村さん…」と声を掛けると、松村さんはようやく気づいたのか、罰が悪そうに俯きながら私の手を離した。

「ごめん」
「とんでもないです。むしろ助けていただいてありがとうございます。…助かりました」

苦笑いをしてそう言うと、松村さんは「いや…」
と呟いて、リビングに入るなり手に持っていた箱をテーブルの上に置く。

「今日は早いんですね、帰り」
「…まあ色々」
「なるほど。…あ、珈琲淹れますね」

マフラーを外してからキッチンへ向かい手を洗っていると、同じくキッチンに来た松村さんに声を掛けられる。