ロゼッタ２ (ページ28)

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ガチャリと玄関の扉が開く音がして、その足音は真っ直ぐにリビングではなく２階へと向かっていく。
「あ、北斗」ってジェシーくんの声に誰よりも一番反応したのは、樹くんでもなく慎太郎くんでもなく、私だった。

「そりゃ気になるよね」

そう言って私を振り向いた樹くんは、もう携帯をテーブルの上に置いたままにしている。

「あいつ意外と構ってチャンだからさ、家に帰ってきてんだし気になるなら直接聞いてきてみ？」
「……でも」
「Aちゃん俺らのこと少しは知ってるかもしんないけど、北斗のことはまだ何も知らないんじゃない？」
「Aちゃん考えすぎだし悩みすぎ。そんなに気になるなら、樹が言ったみたいに聞いちゃおうよ」
「…でも、いいのかな」

どうしても不安を拭いきれなくて俯いたら、ふわりと甘いフレグランスの匂いが近づいた。

「悪いことなんてなくない？」
「ない…かも？」
「かもじゃなくてないの」

ピン、と樹くんに軽く指で弾かれた額。それはちっとも痛くなくて、だけど樹くんがものすごく優しい目をして私を見るから、思わず額を手のひらで隠した。
慎太郎くんは複雑とでも言いたげに眉を顰めて、何か言いたげに、けれど静かに背を向ける。

「ほれ、行った行った」
「…うん」

ひらひらとてを振る樹くんは、慎太郎くんと並ぶように既に背中を向けて行ってしまう。
手のひらをぎゅっと握りしめて、呼吸を深く吐く。
話しかけに行って、もし反応がなかったらすぐに部屋に戻ろう。
そう決めてキッチンに向かい、前に松村さんが気に入ってくれた甘さ控えめのココアを淹れて、木材のトレイに乗せて松村さんの部屋がある２階へ向かった。