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「よし、俺風呂行くわ」
「あ、うん。いってらっしゃい」
ネクタイを緩めながらキッチンを後にしていった優吾の背中を見送る。
それから少ししてアルバイトから帰ってきたジェシーくんと慎太郎くんの二人が並んでキッチンにやって来て、「ねえめっちゃいい匂いがする！」って目を輝かせてくれていたからいつも以上に張り切って唐揚げを作ったのだった。
22時。小説を読みながら時計を見る。
いつもなら遅くてもこの時間には決まって帰ってきているはずの松村さんは、やっぱり帰っては来ない。
明日も仕事だけれど、正直いって今の心境は仕事どころじゃない。気が気じゃないし、そろそろ心配にもなる。
「あれ、部屋に行ってなかったんだ」
そう言ってリビングに来たのは、わしゃわしゃとタオルで髪を拭くお風呂上がりの慎太郎くんだ。
「うん。松村さん、まだ帰らないから気になっちゃって」
「あー、そういえば遅いね。何してんだろ」
慎太郎くんは、私の座るソファーの背もたれ部分に軽く腰を下ろす。
「何読んでんの？」
「これ？松村さんに借りてる小説だよ」
「ふうん」
「…よかったら何か淹れようか？」
「んーん、これがあるから大丈夫」
そう言って慎太郎くんが見せてくれたのは手に持っていたミネラルウォーターが入ったペットボトル。そういえばジェシーくんもよく飲んでるのを見かけるなあ。
「なんかあれだね。Aちゃんが�眞呂叛里�ら知り合いだからまた少し違うけど、Aちゃんは北斗とも最近仲良いじゃん」
「え？そ、そうかな」
「そうだよ。この前だって二人で出かけてたし」
「…でも樹くんとも二人で出掛けた事あるよ？」
「んー…」
難しい顔をした慎太郎くんは、どこか気だるげに目線を下に落としたまま続ける。
「俺まどろっこしいの苦手なんよ。だから率直に言うんだけどさ」
「うん」
「Aちゃんはもしかしたら北斗のことが好きなのかなって」
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作者名：りく
| 作成日時：2021年12月23日 21時
