ロゼッタ２ (ページ23)

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▶︎ それでも君が好きページ23

「A。……A？」
「…え？」
「焦げるぞ、それ」
「あ！うわあ！」

いつからそこにいたのか、仕事から帰ってきたらしい優吾が、沸騰しすぎてコンロにこぼれている鍋を見ながら言っている。
慌てて火を消したものの、すっかり水分がなくなってしまったロールキャベツ…になるべきだったもの。いや、汁のないロールキャベツもきっとある。幸いにも焦げる前に止めたから問題なく食べれるけど、料理中に考え事をするのはやっぱりよくないと反省して。汚れてしまった鍋蓋を洗おうとしたら、「なんかあった？」と優吾は続けたから私も優吾を振り返った。

「うん…」
「あんま言いたくない？」
「そんな事はないよ」
「けど言いたくなさそうな顔してる」
「…うん」
「隠し事が下手で助かるわ」

そう言って笑う優吾はやっぱり優しくて、言いたくないと顔に出ていたとしても、つい話したくなっててしまう。

「…今日さ、松村さんと買い物にいく予定だったんだけど」
「うん」
「来なかったんだよね」
「北斗？」
「そう。電話したんだけど途中で切れちゃって、LINEもしてみたけど既読もつかなくて。何かあったのかなって考えてたら焦がしかけちゃった」

優吾のおかげでギリギリセーフだったけど！って笑いながら言うと、優吾は困ったように眉を下げた。

「…優吾？」
「ん？」
「あーいや、なんでもない」

どうしてだろう。なぜか優吾が切なそうに見えて名前を呼んでしまう。けど、返事をした時にはもういつもの優吾になっていて。違和感を覚えながらも、上着を脱いで腕に掛けると誰かに電話をかけ始めた。

「……出ないな」

電話の相手が出ないらしく、優吾は画面をタップしてメッセージを送っているようだった。
相手は誰なのか分からないけれど、私が詮索するのもおかしな気がして唐揚げに使うもも肉に下味をつけ始める。