ロゼッタ２ (ページ21)

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「園児の集まりかってくらい頼りにされてんね、あなた」
「頼られてるんですかね？だとしたら嬉しいです」
「なんか違う気もするけど…本人がいいならまあいいか」

やれやれと肩を竦めた松村さんの手際のよさは素晴らしくて、あっという間にふんわりとしたサイドアップが出来る。
松村さんの指には魔法がかかってるんじゃないかっていつも思う。
それを言ったら松村さんは困ったように笑って、『だとしたら美容師はみんな魔法使いになるよ』って言ってたっけ。

「ん、出来た。もういいよ」
「ありがとうございます松村さん」
「…どういたしまして」

じっと私を見た後に目を逸らす松村さんのこの仕草は、何かを言いかけてやめた時の癖だ。
気になって口を開こうとしたけれど、「Aちゃーん？」って慎太郎くんの声がする。

「慎太郎待ってるよ、早く行きな」
「…分かりました。じゃあ」
「いってらっしゃい」
「あの！LINE、しますね」

先に背中を向けた松村さんにそう言ったら、松村さんはこちらを振り向いてくれた。
「分かった」ってただ一言返ってきた、それだけでも十分嬉しい。
「行ってきます」と松村さんに頭を下げて顔を上げると、松村さんは右手を軽くあげて返事をしてくれた。

特別何かがあったわけではない。
けれど

『今日の夕ご飯のリクエストは何かありますか？』

仕事の合間に送るLINEは少しだけそわそわするし

『ロールキャベツかな』

松村さんから空いた時間を見つけて返事がきているのを見ると少しだけドキドキする。