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『そっちはどう？』ってLINEをくれた松村さんは最終の新幹線で実家に向かって行ったし、ひと足先に『来年もよろしくね』と樹くんもさっき連絡をくれている。実家に行けばいつでも歓迎ムードだとかで、なぜかパーティ用の派手な眼鏡をかけた樹くんの写真も添付されてて愛されてるなあと笑ってしまったけれど、今年は…まあ、色々あったものの最終的にはよかった。
だって、ここに住む6人と出逢えたから。
「…なんか」
「はい」
「最初はなんでまた女を住ませるのか意味が分かんなかったんだけど」
きょもさんが言った”また”という言葉が引っかかった。ということは、私が来る前にもここには女性が住んでいたらしい。
黙っていると、きょもさんは私をちらりと見上げて首を振る。
「言っとくけど、�眞呂糧狃�じゃないよ」
「え？あ、そうなんですね」
「それにすぐ出てったから、俺は顔も名前も覚えてない。だから気にしなくていいよ」
「…わかりました」
「…ほんっとバカバカしい」
頬杖をつきながらそう吐き捨てたきょもさんは、一体今誰のことを思い出しているのだろう。
普段から掴みどころがなくてふわふわしているきょもさんだけれど、たまにこういった鋭い目をする時がある。
それは前に優吾から聞いたバンドのことが原因なんだろう。
おそらく顔を顰めているだろう私に、きょもさんはまた吐き捨てるように言葉を放った。
「恋だの愛だの、そんなのバカみたいだって思ってる。ましてや愛してるなんて言葉ほど、安くて信用できるもんじゃない」
静まり返るキッチンに、リビングではしゃぐ3人の声が聞こえて来る。
「…まあ、でも。今は色んな意味でそうじゃないこともあるって解釈してる」
「そう、なんですね」
「だから今は嫌じゃないんだ。こういう賑やかに過ごす年の瀬も、今こうしてる瞬間も。だからさ、なるべくなら長くここにいて…ほし、い」
思いの外真っ直ぐな目をして私を見るきょもさんは、とても真面目な表情をしていた。
想像すらしていなかったことを言われて思わず戸惑う。
けれどようやくきょもさんに受け入れてもらえたことが嬉しくて、何も言えないまま、だけど緩む口元を隠しきれないでいたら。
「……かも」
「かも…」
「別にそういう変な意味じゃないから。ただ、あんたの作るご飯は嫌いじゃないだけ」
「えーと…はい、ありがとうございます。嬉しいです」
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作者名：りく
| 作成日時：2021年12月23日 21時
