ロゼッタ２ (ページ15)

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「ノック忘れた…まあいいか」
「…おはようございます」
「おはよう。今から出かけるけど、夕方までには戻る」
「え？あ、はい。分かりました」
「言っとくけど、遊びに行くんじゃなくて店の掃除だから」
「えっと…大丈夫ですよ。ちゃんと分かってますし、遊びに行くとか思ってませんから」
「…ならいい」

じゃあ、ときょもさんは早々にドアを閉めていく。
一応炊事を担当してるから、わざわざ教えに来てくれたんだろうか。
ふとベッドサイドの鏡を見ると、ぴょんと前髪が跳ねている。…いやちょっと待って。もしかしなくても、これきょもさんに見られてた…？

「次はノックしてくださいってお願いしよう…」

きょもさんは何も思わないだろうけど、さすがに私はだって羞恥心はある。
二度寝は諦めてベッドから立ち上がり、そろそろ私も動き出そうと着替えることにした。

リビングに行くと、早速ジェシーくんが優吾の指示を受けながら掃除をしている。手際もいいから大晦日の大掃除は慣れているんだろう。私も手伝おうと腕まくりをしていたら、ジャージ姿の松村さんがやって来た。

「おはよう」
「おはようございます松村さん。松村さんも掃除ですか？」
「うん。洗面台とシャワールームは俺の持ち場だから」
「持ち場とかあるんですね…」
「分担で作業した方が早いよ。この家、笑えないくらい広いから」

…確かに。と、相槌を打つ。
いくら優吾が裕福な家庭で育ったといっても、一人で住むにしては広すぎる。最初から誰かとルームシェアするつもりだったならまた話は違うんだろうけど、そもそも優吾はなんでルームシェアをしようと思ったんだろう。

「キッチンの掃除するの？俺自分の部屋はもう終わらせてるし、よかったら手伝うよ」
「え、いいんですか？」
「いいんです。ほら、それ貸して」

私がやるはずだったガスコンロの汚れ落とし。手慣れた様子で泡スプレーを吹きつけていく松村さんに「ありがとうございます」と言って、私はシンクの掃除を始めて行く。
黙々と掃除を始めるキッチンチームの私たちの後ろで、リビングチームの一人であるジェシーくんの明るい笑い声が響いてる。
ああ、なんだか賑やかでいいなあ。
それが表情に出ていたようで、「ご機嫌だね」って松村さんに言われて気が付いた。

私はこの家にいると、自然と口元が緩んでいく。