ロゼッタ２ (ページ13)

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ニッと樹くんは笑ってくれて、久しぶりに樹くんと話せた事に安堵する。
あの日からどこか気まずくて、お互いに話すタイミングがなかなか掴めないでいたのは事実で。
樹くんはソファーに深く腰掛けて天井を仰ぐと、「俺ね」とゆっくり話し始めた。

「恵まれてると思ってんの、色々。
家族も仲良いし、ちっちゃい頃からわりと人気者で周りに人がいるのは当たり前だったし、兄貴もいるから世渡り上手って言うの？何をしたら相手が喜ぶのかがわかるし、これをしたら何をしてくれるのかが自然と分かってさ。
だからー…まあ、その、なに。色んな子と付き合って色んな経験はしてきたよ。
女の子なんてみんな同じでしょって考えは、正直今も変わらない。変わらないけど、Aちゃんに言われた時はガツンときたかな。いい意味でね」

樹くんは難しい話をしたあとみたいに小さくため息を吐く。そのまま前髪を右手で掻き上げた時、二連のフープピアスがきらりと光って揺れた。

「Aちゃんは今も髙地の事好き？」
「え…？」
「付き合ってたんでしょ、昔。髙地が家に女の子連れてきたのは初めてだったから、物珍しくて好奇心しかなかったんだよね。なのにAちゃん、俺のことも気にかけてくれててさ。だからどんな女の子か知りたくて、話がしたかったから連れ出したってのに。ほんとごめん」
「そんな…全然いいよ。気にしてないから謝らないで」
「えー？そこは気にしてて欲しかった」

ふふっと笑って樹くんを見る。樹くんは少し目を細めて、「さっきね」って続きを話す。

「髙地にAちゃんと何があったって聞かれたから、同意されてないけどキスしたって言ったら殴られた」
「…そうだったんだ」
「本当ごめん、もうしない。それは約束する」
「うん」
「あと」
「ん？」
「…や、これはまた今度話すよ。行動に移してから、いずれね」

分かった、と私はうなづいたけれど、樹くんが何を言おうとしていたのが気になって。だけど樹くんはその話をはぐらかすように「腹減ってきた」なんて小さな子どもみたいに口をとがらせる。
「何か作る？」って聞くと、嬉しそうに口元を緩めて「うん」と答える樹くん。
そういえば慎太郎くんも今日は完徹で卒論を終わらせるって言ってたっけ。あとで慎太郎くんにもお夜食を持っていこう。
そう決めて椅子に掛けてあるエプロンをパジャマの上からつけたら、樹くんが「かわいい」っていつもの調子でからかってきたから、「ありがと」って私も調子良く返してみた。