ロゼッタ２ (ページ12)

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鈍い音が下から聞こえて目を覚ました。
こんな夜中に何があったんだろう。

これが平日だったとしたら気にはなるけれど二度寝してしまっていたに違いない。
明日は大晦日だから仕事も連休に入ったし、ちょっと下に行ってみよう。ベッドから下りて肩にブランケット
を掛けて静かに階段を降りると、リビングに電気がついているのが見えて足を進める。

「ふざけんなよ」

ビク、と肩が跳ね上がったのには理由がある。
この声は優吾の声だとすぐに分かったけれど、聞いたことのないような低い声。
その場に立ち尽くしていると、「いてーな」って樹くんの声もした。

「お前がキレてんの初めて見たわ」
「茶化す余裕があんならもういっぺん殴ってやろーか」
「っ、ダメだよ優吾…！」

居ても立っても居られずに思わずリビングに入ると、私を見て驚いた優吾と目が合う。
少し離れたところに、唇の端が血で滲んでる樹くんが立っていて、私を見ると罰が悪そうに目を逸らしてしまう。

「……悪い」
「いいよ、悪いのは俺だし。…あー、もしかして起こしちゃった？ごめんねAちゃん」

そう言った樹くんは、本当に久しぶりに私を見てくれた。

「Aちゃんのことになると途端に頭回らなくなるな、髙地は」
「うるせ」
「優吾」
「…ハイハイ」

優吾は軽くあしらうように肩を竦めると、「悪かった」と樹くんの肩に手を置いて二階へと上がってしまう。
残された樹くんはどこか気まずそうにしているけれど、そんな気まずさよりも先に私は消毒液や絆創膏が入ってる箱を戸棚から取り出して、樹くんに椅子に座るように促した。

「痛くしない？」
「痛くするつもりはないけど、ちょっとしみるかも」
「じゃあなるべく優しくしてほしいかも」
「はいはい」

さっきの優吾みたいな返事をして、コットンに消毒液を染みこませる。
それを樹くんの口元に持っていってそっと傷口に触れると、「いて」と樹くんは顔を顰めた。

「優しくしてって言ったのに」
「しみるのは我慢して」
「へーい」

もう、と樹くんにため息をついて絆創膏を貼ろうとしたけど、小さな子供じゃないしさすがに要らないかな。迷っていると樹くんは「これだけでいいよ、ありがと」って言うから絆創膏はそっとしまった。

「…この前は本当にごめん。反省してる」
「…ううん。私もごめんね」
「なんでAちゃんが謝んの」
「ひどいこと言っちゃったから」
「あれのどこがひどいの？そんなの全然気にしなくていーよ」