さよなら、ジュリエット 2 (ページ9)

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むすっとしながら答えると、イタズラを成功させた子どもみたいに樹と北斗は笑っている。
ため息をついてみるとちょうどオーダーを運び終わった目黒くんが通りかかって、「樹くんと北斗くんだ」と嬉しそうに笑みを浮かべる目黒くんがたまらなく私の癒しになる。

「そういや目黒もここで働いてんだっけ」
「そうっすよ」
「つまりAは後輩なわけだ」
「先輩は敬えよ～A」
「…ねえもう助けて目黒くん」

目黒くんに助けを求めたら、ふはっと笑って「仲良いんですね」とびっくりするくらい天然な発言を投げかけてくる。違う目黒くん、そうじゃない。とツッコミたかったけれど、実際目黒くんが先輩なのは事実だからツッコミを入れるのはやめた。

何でそんなに盛り上がってるかは謎だけど、大学生の陽キャすぎるノリで楽しそうな二人をよそに私たちは忙しなく動き回る。
結局ラストオーダーまでいた樹と北斗はすっかり出来上がってしまっていて、ただでさえ陽キャな樹は人類みな友達。みたいなノリで北斗に絡んでる。北斗は北斗でお酒が入ると眠たくなるらしくて、さっきからウトウトと危なっかしく首を下げていた。

閉店したあとの片付けもあるし、肩を組み合う酔っ払いの二人を見送って目黒くんと店内に戻る。…気まずかったのは私だけだったみたい。

すっかり静かになった店内で後片付けをしていると、ダスターを持った目黒くんが口を開いた。

「Aさんって樹くんと北斗くんの二人といつから知り合いなんですか？」
「うーん…初めて二人と会ったのは中学に入ってからだよ」
「へえ。北斗くんは分かるけど、Aさんみたいに頭のいい人が樹くんと仲がいいのが俺的には新鮮で」
「えー？それ悪い意味で？」
「全然悪い意味じゃないですよ。なんていうか…真面目な北斗くんとAさんの二人が樹くんといても違和感とか全くないです。むしろそんな三人だから、俺からしたら羨ましい。みたいなところはあります」

あまりにも真面目な顔をして言うものだから、なんだか私は気恥ずかしくて。
確かに私たちって周りから見たら異色の組み合わせなんだろうなと思う。
頭がよくて運動も出来て真面目な北斗と、頭が切れて運動も出来て不真面目だけど優しい樹に、至ってごく平凡な私の組み合わせは誰がどう見たって異質かもしれない。
それでも三人でいる時の時間は好きだし、できることならこれからも仲良くしていたいと思う。
…思うけど、今はもう、少し難しいかもしれない。