さよなら、ジュリエット 2 (ページ13)

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帰り道はお互いに無言だった。

例えば手がぶつかり合う距離で歩いてるのに、樹は手を繋いでこない。
これが別な女の子だったら手がぶつかる前にスマートに手なんか繋いじゃって、「危ないよ」なんて車道を歩くんだろう。

会話だってきっと弾むに違いない。意外と樹は物知りだから話で人を飽きさせないし、女の子が気になるような話題を提供して、逆に女の子がする話題も知っていて話をうまく拡げて言うんだろう。「今度一緒に行かない？」とか。いや逆だ。きっと樹がうまく女の子から言うように仕向ける。

そんなことを考えていたらだんだんモヤモヤしてきてしまって、自宅まで送ってくれた樹をこれでもかって見上げる。
樹は「ん？」って素知らぬ顔で私を見るから、「なんでもない」って私は玄関の鍵を開けてドアを開いた。

「戸締まりちゃんとしろよー」
「分かってる」
「なに怒ってんの」
「別に」

はあ、と樹がため息をついて泣きそうになった。
一人でモヤモヤしてるのは勝手な考えをしている私のせいなのに、それを樹のせいにしようとしてる自分の醜さが嫌い。

こんな幼稚な私じゃ気持ちなんて伝えられない。ダメだ、やめよう。

そう思ってドアを閉めようとしたら、ドアが何かにぶつかって閉まらない。足元に目を落とすと樹の靴がストッパーみたいに挟まってて、私は驚いて怒ったように顔を顰める樹を見た。

「なんでそんな顔すんの」
「な、に…」
「自覚するまで気長に待とうとしたけどやめるわ」

そう言って玄関のドアを開けた樹は、私の手を引いて顔を近づけてきたかと思えば突然キスをしてきた。