さよなら、ジュリエット 2 (ページ12)

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「教えてもいいけど、きっとAには分かんないと思う」
「そうなの？」
「これは俺の意地」

そう言った北斗は驚くほど綺麗に微笑んで、悲しそうに瞳を揺らした。

ごめんね北斗。
私は北斗に幸せになってほしい。
北斗を幸せに出来るのは私じゃない。北斗にはもっともっと素敵な人が必ずいるから。

もしかしたら伝わったのかもしれない私の気持ち。
「先に帰るよ、」って北斗がいなくなった準備室は、まるで世界の終わりを迎えたかのような静寂に包まれていた。

大学を出て携帯を取り出そうとしたら、ちょっとした人集りが出来ていた。女の子たちに取り囲まれた中心にいるのは、困ったように眉を下げて笑ってる樹だ。

「え～、今日も一緒に遊べないの？」
「もう遊ばないし遊べないって言ったじゃん」
「突然そんなこと言われても、私たち気持ちの整理がまだついてない」
「それはごめん。でも俺は好きな子に余計な不安感じさせたくないんだよ」

聞こえてきた会話に耳を塞げなかったのは、樹があまりにも優しい顔をして私を見てたから。
真っ直ぐに見つめられた私だって、彼の目を離せない。
樹を囲んでた女の子たちは私たちに気づいて離れていく。
すれ違いざまに「最低」って聞こえたけど、聞こえないふりをすることにした。

「遅せぇよ」
「うん、ごめんね」
「…お前、なんか…」
「ん？」
「……いや、なんでもない」

樹は一瞬顔を顰めただけで、「帰ろうぜ」って先に歩き出す。
特に一緒に帰る約束をしていたわけじゃないけれど、「待ってよ樹」と追いかける私は、きっとこれをどこかで期待していたのかもしれない。