さよなら、ジュリエット 2 (ページ2)

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「どうしたの？」

鞄に手を伸ばすのをやめて北斗を振り返る。
北斗は一度眼鏡の縁に手を添えて、外していた視線を私に向ける。

「俺も隠し事してるって言ったあの話覚えてる？」
「うん、覚えてるよ」
「その続きでも少し話そうかなって」

そう言った北斗の表情からは答えが想像もつかない。ただ私をじっと見つめて、ゆっくりと口を開いた。

「好きな子がいたんだよね。こう言うと過去形なんだけれど、現在進行形でさ。じゃあなんで過去形なのってなった時に、俺は一つ思い違いをしてた事に気づいて」
「思い違いをしてたこと？」
「そう、俺はその子を知ってたつもりでいた。いわゆる自己満足ってやつ。本当は何も知らないくせに」

だんだんと自分を卑下するように話す北斗が急に遠く感じる。そんなことないよ、なんて無責任な言葉も言えない。だからただ北斗の言葉を待つしか出来ない。

「好きな人に好きな人がいたって言われて、俺本当に何も知らねぇんだなってガッカリした。ずっと近くにいたのにそんなことあんの？って。んで、今は今で選んでもらえんのかなって焦ってる。…忙しいだろ？」

次第に見えてきた気がする答え。
皮肉めいたように笑う北斗は切なくなるくらいに儚く見えた。

「中学の時同じ委員会だったじゃん、俺ら」
「うん」
「二人で風紀委員の腕章付けてさ、樹もいて。よく三人でいることが多かったけど、俺は多分あの日の帰り道から樹よりも先にAのこと異性として意識してたよ」

北斗が言うあの日の帰り道を、私も今も覚えてる。