夜を呑む (ページ13)

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「翔太に頼んでたのに全然連絡くれないからさ、俺嫌われてんのかと思ってた」

乾いた笑いをするその人…深澤先輩は、気怠そうにネクタイを緩めて煙草に手を伸ばす。

「あ、煙草嫌い？」
「いえ…大丈夫です」
「そ？」

確認をした深澤先輩は、電子タバコではなく紙煙草に火をつけた。
深澤先輩の綺麗な指をまじまじと見てしまい、あの時深澤先輩に対して思ったいたことが言葉として溢れてきそうになり、慌ててビールを口に運ぶ。

「酒強いのね」
「嗜む程度に、ですよ」
「それ強いやつが言う台詞な。てか敬語やめない？」
「…深澤先輩が言うなら」
「なんだそれ。じゃあ尚更言うこと聞いて、敬語なんてやめやめ」

ふーっと吹き出した煙は私には向かない。遠くへと飛ばすその横顔は、しばらく会わないうちにまるで知らない赤の他人のようにすら見える。
成人はしているはずなのに、ただ一つ学年が違うだけで、ずっとずっと大人に見えるのはなんでかな。
まるでお前なんかまだまだ子どもだと言われているようで、そんな被害妄想のような考えをしている自分に嫌気がした。

「に、しても」
「……？」
「いや、やめた。それよりもっと食え、お前細すぎ。ちゃんと飯食ってんのかよ」

首を傾げていた私に、深澤先輩は言いかけた言葉をすり替えたように感じた。
ねえ先輩。今何を言おうとしたんですか？
胸の内でつぶやいた言葉はビールと共に深く深く飲み干して、無理やり串焼きを口に入れようとしてくる深澤先輩に大人しく従うことにした。