Feather (ページ9)

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言えないけどページ9

正門の前に先に着いたのは私だった。田中くんは…多分、呼び出されてるのかもしれない。

前に見たことがある。
帰ろうとした田中くんを呼び止めて、好きですって想いを伝えてる人を。
田中くんはにっこり笑って、返事をする。それから田中くんは…なんて言ってたっけ。

「待った？」

ぼんやりと空を眺めながら思い出していたら、私を見て笑みを浮かべるその人は待ち人である田中くん。

「ううん。…っていうか、今日は部活いいの？」
「昨日充分活躍したし、今日はいいの」
「エースなのに」
「エースだからだよ」

田中くんはバスケ部のエース。だから昨日もラストのあの瞬間も逆転のシュートを決めた。

バスケをしてる時の田中くんは普段あまり見ない真剣な顔をしていて、綺麗なフォームでゴールネットを揺らした後の、あのガッツポーズをする仕草が特に好き。
いいなって、そう思う。

「なーに考えてたの、Aちゃん」
「…え？」
「好きな奴のことでも考えてた？」
「え、ちがっ」
「妬いちゃうよ俺」
「…違うってば」

田中くんのことを考えてた、なんて絶対に言えない。嘘をついてしまったことに罪悪感。
…ごめんね田中くん。
本当はあなたのことを考えてたんだ。そんなこと言えないけど。