Feather (ページ40)

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変わるページ40

私が驚いたのは、ホームルームが終わり帰り支度をしていた時のこと。

「松風さん」
「はい」

教科書を鞄にしまっていると、珍しく名前を呼ばれて振り返る。
明日はバイトだから頑張らなくちゃ…なんて考えていたから、思わず声が裏返った返事をしてしまったことにはどうか気づかないでほしい。

「いきなり話しかけてごめんね～」
「あ…いえ、大丈夫です」

どうやら気付いてないみたいでホッとする。
今話しかけてくれてるのは誰だっけ。確か…同じクラスの、あまり話したことは無いけど、田中くんと同じバスケ部の栗原くんだ。彼も一軍の人、ということ以外彼をよく知らないのが申し訳ないけれど。

「あのさ、今日なんか雰囲気違うよね。彼氏できた？」
「別にそういうわけじゃ」
「ああ違うの？ならよかった。おれさあ、前から松風さんのこといいなって思ってたんだよね」

なんとなく、嫌な予感がした。
そもそも話したこともないし、名前だってさっき思い出したくらいなのに。
にこりと人当たりのいい笑顔を浮かべてるけど、こういう貼り付けたような笑顔は知ってる。
私を水溜まりの場所に背中から押した誰かと同じ、笑顔の仮面。

「これから予定ある？ないならおれと一緒に帰ろうよ」

ね？と、栗原くんの手が私の右肩につこうとした時、別の誰かの手が置かれてぐいっと後ろに引かれる。強い力じゃないから仰け反りはしなかったけれど、驚いて手の先を見たら田中くんがいた。

「悪いけど今日は俺と約束してるんだよね」
「田中…お前女なら他にもいるだろ」
「この子は特別」
「…はあ？」
「だから、Aちゃんは俺にとって特別な女の子。もうああいうのはやめたんだよ」
「お前それって」
「はいおしまい。行こ？Aちゃん」

鞄を背中に当てながら、田中くんが笑みを浮かべる。「うん」と無意識に返事が出て、教室を出ようとしたらどこからか戻ってきた京本くんとすれ違う。

「自信ついたみたいだね」
「覚悟ならとっくにしてたのかも」
「そういう顔してる。任せたよ」
「うん。ありがとね、きょも」

二人のやりとりを見ていたら、私を見た京本くんはやっぱり優しく微笑んでくれる。
本当に綺麗で美しくて恥ずかしくなって視線を落としたら、どうしてだか不満そうな田中くんが「ねーえ」って呟くと楽しそうに京本くんは笑った。