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「ミケんとこ寄って、そのあと二人で出かけよ。帰りは送るから。でもちょっとだけ帰りは遅くなっちゃうかも。門限何時?」
「あ、門限はないよ」
「そうなの?」
「うん。お母さん夜勤で夜はいないし、お父さんも単身赴任で家にいないから」
門限ある?じゃなくて、何時?って聞いてくれる田中くんの細やかな気遣いに感心してしまう。あると答えても時間を答えても門限までの時間に間に合うようにするんだろうなって。たけど前者の聞き方より、後者の聞き方の方が答えやすいと思うから。
「そうなんだね。…まあでも学生らしく、遅くなる前にちゃんと送り届けるからさ。俺紳士だし」
「……なんか、」
「え、なに。なんかおかしい?」
「…ううん、違うの。いつもの田中くんだと思ったら嬉しくて」
つい声に出して笑ってしまうと、びっくりしたように目を丸くした田中くんが私を見て、いつもみたいに笑ってくれた。
ほらね、やっぱり大丈夫だった。田中くんが笑ってくれる。ただそれだけのことで、私は満たされる。
なんだかふわふわとした気持ちのまま学校に着いた。登校時間を少し時間をずらしただけで、普段すれ違わないような人たちともすれ違う。
田中くんと正門をくぐると案の定ヒソヒソと聞こえる言葉の刃も耳をすり抜けていく。
「じゃあまた後でね」って教室まで送ってくれた田中くん。ざわつく教室に入ると、席についていた京本くんが話し掛けてくれる。
「大丈夫だった?」
「え…あ、うん。大丈夫、ありがとう」
「それなら良かった。きつく叱っておいたから、これからも樹と仲良くしてあげてね」
京本くんの綺麗な金髪の前髪が揺れる。
ハーフアップの可愛らしい髪型によく似合う綺麗な微笑みは、周りが噂する王子様という表現がぴったりだ。
きつく叱っておいたから、って京本くんが言うってことば、京本くんは昨日の私を見て察していたのかもしれない。
そういえばさっき田中くんがまたきょもに怒られるとか言ってた気がする。多分、そのことなのかもしれない。
「今日だけ?」
「ん?」
「ポニテとメイク」
「ああ…うーん、どうしようかなって。変かな」
「ちっとも変なんかじゃないよ。とてもよく似合ってるし、いつも以上にかわいい」
「…えっと…ありがとう」
「うん。明日も楽しみにしてるね」
明日も…って、京本くん言ったよね?言った。それも絶対に断れないような綺麗な微笑みを浮かべて。…これは明日も頑張ってメイクしないといけないみたいだ。
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作者名:りく | 作成日時:2021年9月24日 17時