Feather (ページ20)

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先約ページ20

「わっ」
「Aちゃん全然気づかないんだもん」
「気づかなかった…」
「携帯に夢中で全く気付く素振りもなかったなぁ」
「ごめんね」
「いーよ。ね、それより今日部活ないんだけど空き地行かない？」
「…えっと、今日？」
「今日」

にこっと目尻を下げて私を見る田中くんに私は固まる。今日に限ってバスケ部が休み。なんてタイミングの悪さだろう。

今日は北斗の用事に付き合う予定があって、今更ドタキャンなんて出来ない。
なにせ今日北斗が行くお店はパフェで有名なお店で、女の子受けしそうな可愛らしい内装に北斗が一人で行けなくて私が付き合う形で行くことになっているから尚のこと。北斗って意外と甘い物が好きだから。

…北斗が一人で行くのを想像したら似合わなさ過ぎて少し面白いと思ってしまったのは内緒だ。

「ごめんね、今日は先約があるの」
「そっか。じゃあ仕方ないね」
「ごめん」
「謝んないでよ。また誘っていい？」
「うん、もちろん」
「良かった」

田中くんが笑顔を見せてくれたことにひどく安心した。
もしかしたら断ってしまったことが原因でもう誘われないんじゃないかって一瞬思ってしまったから。…嫌われなくて、良かった。

「あ、そうだ田中くん。昨日空き地に猫缶置きに行ったんだけどね、ミケちゃんいなくて」
「ったく、あいつまた最近ふらふらしてんのか」
「元々野良猫だから気分屋なところもあるけどさ。だからこれ、田中くんに任せてもいい？」

急いで鞄を開けて取り出したのは、昨日ミケちゃんに会えなくてあげられなかったミケちゃんの大好物のちゃおチュール。

「おっ、これミケの大好物じゃん」
「絶対喜ぶと思うの」
「あいつAちゃんに大事にされてんなぁ」
「田中くんもでしょ？」
「…まーね」

任せてよ、そう言って田中くんはちゃおチュールを受け取ってくれた。それをポケットにしまいこんで、じゃあまたねって教室を出ていく。

今日一緒に空き地に行けないのは残念だけど、次はきっと一緒に行けますように。
そう願って私は北斗に返信を打ってから携帯をしまった。