いつか終わる ページ18
「Aちゃん困ってんだろ、見て分かんない?綺麗な顔してるわりに女心知らねーのな」
「うるせーよ。こっちは大事な話してんだから邪魔すんな」
「大事な話なら尚のこと、ちゃんと相手の顔を見て読み取れよ。お前よく見た?Aちゃん、今にも泣き出しそうだけど」
田中くんの言葉に北斗はハッとして私を見る。
「…ごめん、」北斗はそう言って私たちに背中を向けた。
「…北斗ごめん。ちゃんと連絡する」
「……うん」
北斗は背中を向けたまま行ってしまった。
残された私は田中くんをそっと見上げる。
目の前の田中くんは怒ってるかなと思っていたけれど、田中くんは私を見て困ったような苦笑いを浮かべてた。
「Aちゃんは悪い子だね」
「え、」
「んーん、意味は知らなくていいよ」
それより帰ろ、送る。
田中くんはそう言って歩き出す。
ーーあのね田中くん。
北斗は私の、誇りなの。
それは言葉にならずに飲み込んだ。
五年前のあの日、一緒に着ようと二人で約束した制服を着たのは北斗だけ。それが現実。
「…夢なんていつか終わるから」
多分それは自分に言い聞かせた。
あの日二人で行こうと話した希望の学校も、今ある田中くんとの距離も、いつか、終わる。
そのつぶやきは田中くんには届かずにほっとして、私は田中くんの背中を追いかけた。
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作者名:りく | 作成日時:2021年9月24日 17時