Feather (ページ26)

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たなかくんページ26

「俺は認めないけどな。この前会った奴だろ、田中だっけ？」
「認めないってお父さんみたい」
「茶化すんじゃないよ」
「だって」
「チャラチャラしてるし女癖悪そう。あと、お前のことなら何でも分かりますみたいな態度も気に食わない。どう見ても俺が一番の理解者だって自負したいね」
「北斗は過保護すぎ。田中くんは優しい人だよ」
「優しいだあ？お前本当にさ…まあいいや。お前が大事なんだから仕方ないだろ、そこは諦めろ」
「…はいはい」

ぽん、と北斗の手が私の頭に置かれる。
懐かしさと気恥しさから逃げるように笑ってみると、北斗は寂しげな目をしながらも同じように笑ってくれた。

田中くんがスランプらしい。

そんな噂を聞いたのは朝のこと。
最近部活に顔を出さないのは怪我をしてるからだとか、部活自体に飽きたからだとか、そんな話ばかりが教室内外に溢れてる。
噂なんか…といつもみたいに気にしないふりをしようとしたけど内心は気がかりで。

「今日のAちゃん、なんかソワソワしてるね？」

なんて京本くんに指摘されてしまうほどに、私は少し焦りにも似た感情を抱いていた。
だって昨日田中くんは言ってた。
『今日部活ないんだけど』って。
もしかしたら本当は部活がないんじゃなくて、行かないって意味だったんじゃないかって。

こういう時に限って田中くんは教室に来てくれない。
いや、そもそも来てくれないなんて思うこと自体が間違ってるのだけれど。

いても立ってもいられずに休み時間にやって来た田中くんのいるクラスの教室。
恐る恐る教室を覗いて見たけれど、田中くんの姿はない。

なんの成果も得られずに自分の教室に戻ろうと踵を返したら、「あれー？三軍の松風さんじゃん」って肩についた髪を手ではらったのはマドンナである佐藤さん。
「ああ、怖いもの知らずのね」「図太すぎ」、佐藤さんの後ろで取り巻きの二軍である彼女たちがそう口にする。
「…失礼します、」面倒なことになりそうで三人を通り過ぎようとすると、「待ちなさいよ」と呼び止められる。