Feather (ページ11)

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クラゲみたいだねページ11

「Aちゃん、俺の鞄開けてくんない？」
「いいよ」
「中に猫缶あるからさ」
「はーい」

ミケちゃんを抱いている田中くんに背中を向けて田中くんの鞄を開く。
中には結構使い込まれているペンケースと何冊かのノート。あとは何通かの可愛らしい封筒と、ミケちゃん用に持ってきたらしい猫缶が入っていた。

ちくり、と胸が痛む。
田中くんがモテることなんてずっと前から知ってるのに。

「…田中くんはさ、女の子からもらった手紙ってどうしてるのか聞いてもいい？」

無意識に思わず口をついてしまっていた。猫缶のプルタブを開けると、においで分かったのかミケちゃんが田中くんの腕の中からすとんと着地する。
手紙を見られて嫌な気持ちになっているはずの田中くんは、すっかり猫缶に夢中のミケちゃんに苦笑いをして私を振り返って「いーよ」って口を開いた。

「手紙は全部読んで、そのあと捨てちゃう」
「そう…なんだ」
「返事はもちろん全部するよ？ただその子たちの気持ちに応えても応えられなくても、ずっと手元には置かないかな。気持ちはいつか必ず記憶と一緒に薄れていくもんだから」
「…なんか、それじゃまるで田中くんが…」

田中くんがそうされたみたいな言い方だね。と言いかけて口を噤んだ。
ちらりと見た田中くんの横顔が、またあの時と同じ悲しげな瞳をしていたから。

田中くんにそんな顔をさせる原因がなんなのか私には分からない。
それでも悲しい気持ちにはなるべくなってほしくなくて、「なに？」って眉を下げる田中くんに「何でもない」と笑って答える。

「えー、絶対何か言いかけてたじゃん」
「まるで田中くんはクラゲみたいだねって言ったんだよ」
「クラゲ…？」
「そう。綺麗で見とれてしまうのに、ふわふわっとして掴みどころがないところ…とか」

まるでさざ波のようにも見える。
寄せては返す波のように、近づいてきては離れて、また近づいてきては離れていく。その繰り返し。そんな人。