オレンジパラドックス((Daiki.A))

夜摘みオレンジ ページ1

貴方side






夜の街。


賑やかな明かりと、人々の声が入り乱れる世界。





そんな中を私は、疲れた体に残った少しの気力で歩いていく。


行き交う人々に流されぬように、ピンヒールで一歩一歩地面を踏みつけながら。





時刻は夜の12時。


終電に間に合うかな、とか

明日も朝早いんだっけ、とか

上司に頼まれた仕事の期限が今週までだっけ、とか。



頭の中は仕事のことで埋め尽くされて、

考えるだけでため息が出る。




“日本人は働き過ぎだ”
そう言う外国人が今はすごく羨ましかった。






突然、バッグから伝わってきた振動。


その正体は携帯の着信だった。




仕方なく足を止めて、画面を見る。








その瞬間、



『いたっ…！』



後ろから強く押された。








ピンヒールだった私は、派手に転んだ。



咄嗟に地面についた手は軽く擦りむいて、

膝は出血こそしなかったものの、

手と同様に擦りむいて、その周りは赤くなっていた。




『…あーぁ…』


履いていたストッキングは大胆に破れ、とてもじゃないけど歩ける状態じゃない。







通りすがる人々から視線を感じる。



立たなきゃ。



そう思ってるのに痛くて思うように体が動かない。



ついでにピンヒール。



転んだ状態から痛めた体とピンヒールで立ち上がれというのは
いくら何でも1人じゃ難しすぎる。









「大丈夫ですか…？」

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