暑さと貴方にやられた夏 ページ46
恋心を取り出したきっかけは、夏休みに入って初めての土曜日にあった。
土日祝はいつもとダイヤが違うことをすっかり忘れて、話し込んでしまったのだ。スマホで時刻表を確認すると、次のバスは2時間後だった。
先程までよく冷えた音楽室にいたからか、じっとりした廊下がいつもより辛く感じる。夏は始まったばっかりなのに。
……さて、なにをしようか。
友達は自転車を漕いで帰っていった。つうっと首筋に汗が流れていくのを感じる。いくら考えたところで、近くの店をぶらつくくらいしか思いつかない。
でも外に出たくない。学校だって別に涼しくないけれど。ああ、バスの痛いくらい冷たい空気が恋しい。
ふと視線をあげると、「図書室開館中!」と書かれたポスターが目に入った。あ、そういえばさっき持ち帰り忘れていた課題をロッカーから回収したんだった。
そのせいで重くなったリュックを持ち上げて、図書室のある3階へと向かう。適当に問題集にでも手をつけて時間を潰そう。
「こんにちは」
図書室にいるおばあちゃん先生へ挨拶をして、涼しい空気を感じる。2時間くらいあっという間に過ぎ去りそうだ。学校からバス停までは20分も歩けば着くから、残されたのは1時間半くらい。そう考えると案外すぐな気がしてくる。
中にはちらほらと先輩がいた。受験の夏だもんな、わたしも来年はこうなのかな。高校受験のときの辛さを思い出して苦笑いを浮かべてしまう。
「ふう」
空いてる席を見つけて座る。なんとなく先輩たちからは離れたところに陣取った。
スマホをすこし眺めた後に意を決して問題集を開いた。汗が冷えてちょっと寒い。でもそれが心地よい。なぜなら今は夏だから!エアコンが寒いなんて贅沢な悩み、最高!
適当に課題を進めていくと、やっぱり1時間半なんてすぐに過ぎた。窓から見える外は相変わらず暑そうだけど、次のバスを逃したらいよいよちょっとアレだしな。
キリのよいところで問題集を閉じて、帰り支度を整えた。落ちたスマホの画面で前髪もチェックして、席を立つ。
「失礼しました、さようなら」
おばあちゃん先生にもう一度挨拶をして図書室を出る。上靴を足にはめて……ああ、もう既に暑い。やっぱり涼しすぎるなんて贅沢な悩みだ。
ローファーを履いて暑い外に繰り出すと、そこには部活帰りの彼がいた。
「あ、A」
彼__須貝くんは、自転車の鍵を無くしてしまいバスで帰ることになったそうで、自然とバス停まで一緒に行く流れになった。
夏の恋は記録的な熱さを誇る→←灼熱でも朽ちない愛を _sgi
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ぶっく。(プロフ) - 萊さん» コメントありがとうございます!遅くなってしまうかもしれませんが、第5弾にて書きます!! (2020年12月31日 20時) (レス) id: 19fcfdccc5 (このIDを非表示/違反報告)
萊 - できたら「恋煩いは不治の病」のしあわせ曲線歪ませての続きをお願いします。 (2020年12月21日 21時) (レス) id: 192c096d22 (このIDを非表示/違反報告)
萊 - リクエストでtmrさんをお願いします。これからも頑張ってください。 (2020年12月21日 21時) (レス) id: 192c096d22 (このIDを非表示/違反報告)
ぶっく。(プロフ) - ウィンターくんさん» うわーー!確かにちょっぴり焼木杭みありますね!!何度も読んでいただけるのは本当に本当に嬉しいです!長編も頑張ります!! (2020年12月4日 22時) (レス) id: 19fcfdccc5 (このIDを非表示/違反報告)
ウィンターくん(プロフ) - 焼木杭のほうの続きが気になるときに、いつもこの「今夜はふたり祝い酒」を読みに来ます。『そのつもりなの俺は』 がすごく可愛くて好きです。 (2020年11月26日 17時) (レス) id: 4ee84c0e12 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぶっく。 | 作者ホームページ:
作成日時:2020年6月7日 4時