灼熱でも朽ちない愛を _sgi ページ45
※高校生パロ注意(力不足により標準語です)
じっとりとした暑さを詰めたような今夏、わたしは恋をした。
恋というのは些か大袈裟な表現かもしれない。でも、ほかに言いようがないのだ。きっと、この気持ちが芽生えたのは暑さにやられたからじゃない。気の迷いなんかじゃ済ませられないほど想いは育っている。
登校するだけで汗をかくような夏休み、なにかにひゅんと追い抜かれる。
「おっ」
氏名がはっきりと書かれた特徴的なリュックを背負った彼の背中を見て、どきりと胸が鳴る。朝、この姿を見られるのはレアだ。野球部に所属している彼は、朝早くから学校にいるから。
「Aじゃん、おはよ」
自転車から降りた彼がくるりとこちらを見て話しかけてくる。あと5分も歩けば学校に着いてしまう距離だけれど、会えただけで嬉しかった。わたしから声をかける勇気もなかったから、須貝くんから声をかけてくれて嬉しかった。
「おはよ、今日は朝早くないんだね」
「そうそう、午後練習試合詰まってるから」
こんな世間話をできるようになったのも、自転車を降りた彼と並んで学校に向かうことができるのも、それを嬉しいと思うのも、この夏休みのおかげだった。この夏休みのせいだった。
元々、なんとも思っていなかったと言えば嘘になる。同じクラスだった去年から、ほんのすこし、気になっていた。底抜けに明るくて優しくて、隣の席になれたときは毎日が楽しかった。
けれど、そんなにいい人ならば他にも彼を良く思う女の子はたくさんいるわけで。すっかり気圧されてしまったわたしは、好きになるのを諦めた。
「あ、じゃあ今日は一緒に帰れないんだね」
「そうじゃん、萎えた」
でも、一度は諦めた恋心を取り出してしまうくらい、彼の笑顔はいつでも眩しくて。今だってほら、一緒に帰れなくってそんなに嫌そうな顔をするだなんて、もう、そんなの、期待しちゃうじゃん。
2年生になってクラスが離れたからもう話すことは無いんだろうなってひっそり思っていたのに、まさか夏休みにこんな嬉しい機会が与えられるとは。
「次は明日の帰りだな」
次、明日、これらの輝きを持つ響きに頬が緩む。しかし、簡単にそう言えなくなる日を想像してしまって、すぐに心が暗くなる。
あと数日で、夏休みが終わってしまうのだ。
夏休みが終わってしまったら、もう、こんなふうに並んで歩くこともなければ、また明日なんてふんわりした約束を結ぶこともないのだろう。
あーあ、悔しいなあ。
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ぶっく。(プロフ) - 萊さん» コメントありがとうございます!遅くなってしまうかもしれませんが、第5弾にて書きます!! (2020年12月31日 20時) (レス) id: 19fcfdccc5 (このIDを非表示/違反報告)
萊 - できたら「恋煩いは不治の病」のしあわせ曲線歪ませての続きをお願いします。 (2020年12月21日 21時) (レス) id: 192c096d22 (このIDを非表示/違反報告)
萊 - リクエストでtmrさんをお願いします。これからも頑張ってください。 (2020年12月21日 21時) (レス) id: 192c096d22 (このIDを非表示/違反報告)
ぶっく。(プロフ) - ウィンターくんさん» うわーー!確かにちょっぴり焼木杭みありますね!!何度も読んでいただけるのは本当に本当に嬉しいです!長編も頑張ります!! (2020年12月4日 22時) (レス) id: 19fcfdccc5 (このIDを非表示/違反報告)
ウィンターくん(プロフ) - 焼木杭のほうの続きが気になるときに、いつもこの「今夜はふたり祝い酒」を読みに来ます。『そのつもりなの俺は』 がすごく可愛くて好きです。 (2020年11月26日 17時) (レス) id: 4ee84c0e12 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぶっく。 | 作者ホームページ:
作成日時:2020年6月7日 4時