【QlK】灼熱でも朽ちない愛を【短編集】

罰ゲームのおかげ _fkr/kchan ページ42

『ごめん！』
『牛丼しか食べられなくなっちゃったから明日のランチ行けない…！』

そう送ったのは昨日の夜だった。俺自身、Aとの久しぶりの約束を楽しみにしていたのに、コラボ動画で背負った罰ゲームの期間と被っているために断らざるをえなくなったのだ。

デートなんて可愛らしい名はつかない食事だし、吉野家やらすき家やらでも怒られはしないだろうけど、好きな人の前でかっこつけたいという男心が折れなくて。

今回は見送って罰ゲームを終えたあとに埋め合わせを……ああ、でも、このご時世じゃ次の約束の取り付けさえ難しいかもな。なんて考え始めると、後悔が押し寄せてきたもんだ。


『牛丼専門店調べた』
『今日ここにしない？ルール的にセーフ？？』

でも、今朝送られてきていた内容に心が踊った。urlを開くと上品な雰囲気の外観や美味しそうな牛肉、お店のこだわりなどが載っていた。

好きな子との約束を蹴ってコンビニかチェーン店の安くて美味い濃い味の牛丼をひとり寂しく食べる覚悟をしていたのに、豪華なランチを好きな子と食べられるなんて幸せ、あっていいんだろうか。


『行こう！ありがとう！』

『福良とのご飯楽しみにしてたから頑張って探したよ』


上がる口角を隠すようにマスクをつけて家を出た。


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「牛丼以外の美味いものが食いたい」
「航平そればっか言ってる」

動画の罰ゲームで3食牛丼を食べることを強いられたわたしの彼氏は、ソファにもたれながらずっとそんなことを言っていた。

あの動画の航平の面白さと一生懸命さはピカイチだったけど、罰ゲームをくらうのは仕方の無いこと。だってビリだったし、ペース配分下手くそだったし、クイズ力発揮できてなかったし。


「Aの作ったご飯が恋しい」


それでも、こんなことをまっすぐに言われてしまえば、近所の外で飼われていた大きくって甘えん坊なワンちゃんを思い出してよしよし撫で回したくなってしまう。可愛いねえ、なんて声をかけながら。

「……牛丼作ってあげよっか？」

あ、でも写真撮ってツイートしなくちゃいけないのならいろいろと面倒くさいか。口にしてからそう気付いたけれど、ソファから飛び上がった彼が目をキラキラと輝かせているので些細なことはどうでもよくなった。

「A大好き！ちょう愛してる！」
「調子いいんだから」

こんな言葉で喜んじゃうなんてチョロいなあ、わたしも。


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『罰ゲームのおかげ』end

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