家族につく嘘と君に吐くしあわせ _kchan ページ26
※高校生パロ
「ちょっとコンビニ行ってくる」
19時半頃、わたしはよくこう言って家を抜け出す。本当は可愛い格好をしてヒールを履いて出掛けたい。
でも、それじゃあきっと呆気なく家族にバレてしまうだろう。それは頂けないので、部屋着に毛が生えたような服装に履き慣らしたスニーカーで財布とスマホだけ持って出ていく。
『もうすぐ着く!』
そうLINEを入れて、目の前が青く光るのをそわそわしながら待つ。目的地まで、あとすこし。あなたに会えるまで、あとすこし。
「A」
声を掛けられて、どきりとする。
「遅くなってごめんね」
彼の笑顔が、ぱっと咲いた。ふわりと幸せが胸に入ってくる。中学生の頃から付き合っているわたしとこうちゃんは、こうやって週に何回か近所の公園でひっそりと会っている。
高校が離れることは、受験期の夏には、ううん、付き合い始めた頃からわかってた。頑張り屋な彼と飽き性なわたしの成績のちがいなんて、考えなくたってわかるから。
「ううん、今日も会えてよかった」
だから、卒業式が怖かった。わたしは好きでいられる自信があったけれど、彼にとっては重荷になるかもしれないと思ったから。周りにちらほらいたカップルも別れ始めたし、振られるんじゃないかと、心配だった。
でも彼は、卒業の日に号泣するわたしに、これからについて笑顔で話してくれた。
“俺、これからしたいこといろいろあるんだ”
漠然とした夢のような話だったけれど、こうちゃんのこれからの目標とか人生計画とか、やりたいこととか好きなこととか、義務教育をやっと終えた元中学3年生なりにたくさん話してくれた。
その中に、夢の中の彼の隣にずっとわたしがいた。
“大学生になって、生活が安定したら同棲もしたいし、”
彼が語ったのは、彼の将来、言い換えるとわたしとの未来。振られるかも、なんて考えていたわたしが馬鹿だったようで、こうちゃんはわたし以上にわたしとのことを真剣に考えてくれていた。
「……A、聞いてる?」
ぼーっと幸せなことを考えていると、目の前の幸せを逃すところだった。彼は頭の上にはてなマークをいくつも浮かべてわたしを見つめている。
「なんか今日うわの空じゃない?」
「っふふ、ごめん」
こうちゃんが顔を覗き込んでくる。
「はやく大人になりたいなって考えてただけ」
卒業式に口約束した幸せをはやく手に入れたいなって。
病める時も健やかなる時も。
『家族につく嘘と君に吐くしあわせ』end
はやく会いたい愛されたい _ymmt→←高鳴る心臓が理由であり答えだ
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ぶっく。(プロフ) - 萊さん» コメントありがとうございます!遅くなってしまうかもしれませんが、第5弾にて書きます!! (2020年12月31日 20時) (レス) id: 19fcfdccc5 (このIDを非表示/違反報告)
萊 - できたら「恋煩いは不治の病」のしあわせ曲線歪ませての続きをお願いします。 (2020年12月21日 21時) (レス) id: 192c096d22 (このIDを非表示/違反報告)
萊 - リクエストでtmrさんをお願いします。これからも頑張ってください。 (2020年12月21日 21時) (レス) id: 192c096d22 (このIDを非表示/違反報告)
ぶっく。(プロフ) - ウィンターくんさん» うわーー!確かにちょっぴり焼木杭みありますね!!何度も読んでいただけるのは本当に本当に嬉しいです!長編も頑張ります!! (2020年12月4日 22時) (レス) id: 19fcfdccc5 (このIDを非表示/違反報告)
ウィンターくん(プロフ) - 焼木杭のほうの続きが気になるときに、いつもこの「今夜はふたり祝い酒」を読みに来ます。『そのつもりなの俺は』 がすごく可愛くて好きです。 (2020年11月26日 17時) (レス) id: 4ee84c0e12 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぶっく。 | 作者ホームページ:
作成日時:2020年6月7日 4時