【QlK】灼熱でも朽ちない愛を【短編集】

愛に貫かれた君見る乙女 _kchan ページ11

※先生×高校生パロ


「航平先生」

渡辺先生は他にもいるから、彼のことはこう呼ぶの。彼が赴任してきたときの集会で「友達にはこうちゃんって呼ばれてます！」と自己紹介していたのでみんなは こうちゃん と呼んでいるけれど、わたしは、違う。

「……っびっくりした、Aさんか」

職員室ではなく比較的人の少ない生徒指導室にデスクがある航平先生。他の先生よりも歳が近いから話しやすくて、注意の仕方や視点がわたし達によっていて、叱られても嫌な気がしない。

「航平先生が呼び付けたんでしょ」

惚れた弱みもあるかもしれないけれど、彼の説教は優しくて理にかなっていてわかりやすいから、すとんと落ちるのだ。

……これは本心なのに、叱られに来てるわたしが言うと、随分と厚みの無い言葉に聞こえる。他の生徒からの評価もきっとこんな感じだろうし、間違ったことは言っていないつもりだけど、お前が言うなって感じだよね。

「そうだけど、……なんでそんな楽しそうなの？」

すとんと落ちるくせに、何度も叱られに来る。なんて言う矛盾なんだろう。でもいいの。こうでもしないと気付いてなんて貰えないんだから。

「航平先生と話すのが楽しいからです」

問いにそう答えると、彼は大きなため息をついた。そんで照れ臭そうにしちゃって、どれだけわたしをときめかせれば気が済むんだろう。いいな、大人って。子供の心弄んでるんだ。

「もう、なんで呼ばれたかわかってる？」
「正直心当たりありすぎてわかんないです」

するとまた大きなため息。

「Aさんってなんであんなに悪さするんだろうってほかの先生と話そうとしたんだけどね、みんな口揃えてAさんはいい子って言うんだよ」

そりゃあ当たり前じゃない。叱られに来てるとはいえ、それは航平先生が好きだからで、説教が好きなわけじゃないんだ。

「航平先生はいい子のわたしのがいいですか？」
「当たり前でしょ」

こうやって構ってもらえるいまが幸せすぎていい子になるつもりなんてなかったけれど、あまりの即答に流石のわたしもすこし検討しちゃう。


いい子になったら、好きになってくれるかな。


「でもいい子になったらここ来れないし」

でも、いい子になったらこの時間全部失うことになる。彼からの評価は上がったとしても、彼の中でのわたしの優先度が下がる。なんでもいいから、彼の心に居座りたいんだ。面倒臭い生徒枠だっていい。とにかく深く根を張って、航平先生の中での優先度を上げなくちゃ。

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