【QlK】帰宅から出発まで【ymmt】〈完結〉

どこから、どこまで ページ30

そのうち、説明しなきゃいけない日がくるとは思っていた。こうちゃんが真面目な顔でこちらに向かってくるのを見て、覚悟を決めた。

「……山本さん、ちょっといいですか」
「なに、こうちゃん顔怖いよ」

茶化すように笑っても力の入った表情は変化しない。こうちゃんとAさん、雰囲気だけ見ても結構仲良さそうだもんなあ、話合いそうだし、ふたりとも良い子だし。


「Aと住んでます？」


前置きも、躊躇いも何もなく発せられた言葉に思わず笑いがこぼれる。どこまで勘づいてるのかもわからないけど、順序立てて説明してあげたくなるな。

でも、Aさんはどう考えているんだろう。同じ学部の仲の良い友達に僕らのふわふわした名前の無い関係がバレてしまうのは嫌かもしれない。

「……今日一緒に帰ろっか、説明するよ」

とりあえず話すタイミングをズラそう。こうちゃんを元の場所に押し戻して、僕も作業を再開する。

『今日、Aさんの友達連れて帰ります』
『いやだったら言ってね』

これだけ送られてきても、なにも掴めないだろうな。困惑する彼女の顔が目に浮かぶ。それがおかしくて頬が緩んでしまう。だめだ、こうちゃんにはお預けしたのに、やっぱり彼女のことは積極的に考えたくなってしまう。

こうちゃんもきっと、めちゃくちゃ気になってるんだろうな。……どこからどこまで話そうか。僕が一目惚れしたところから、全部聞かせてやろうかな。

秘密がバレるようで寂しい気持ちもあるけれど、僕らの関係が誰かに話されることで固められるような気がして、ワクワクしてしまう。

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