【QlK】帰宅から出発まで【ymmt】〈完結〉

あなたが言うには、運命の相手 ページ18

「へえ、この人も東大の人？」
「ううん、早稲田」

東大発の知識集団、と説明してもらったことがあるのでてっきり東大生かと思っていたら早稲田の人らしい。祥彰と一緒だ。知り合いだったりしないかな、しないか、早大は人多いし、もしそうだとしたら世間が狭すぎる。

「……あ、そうそう、それでこの間断ったからさ、今度俺がみんな誘おうと思って、」

まったく律儀なヤローだ。真面目で律儀なのにどこか抜けてて一緒にいて楽しいから、友達が多いんだろうなあ。話を聞くと、年度末は忙しいだろうけど一度誰かの家で前みたいに集まりたい、ってことだった。

「あー、確かにいいかもね、去年はわたしの家だったっけ？……ってこうちゃんまさか」
「そうそう、今年もどう？」

まあ、全体に声掛けるより先に場所確保したほうがいいだろう。今すぐだったら祥彰がいるから無理だけど、4年生になる前にって話だからいなくなってからか。いや、たまに集まりめちゃくちゃよかったりするからすぐの可能性もあるか。

「うーん、今年はちょっと微妙かも」

絶対わたしの家が使える保証もないのにオッケーの返事を出すのも気が引けるのでやんわりと断る。

「え、珍しいじゃん、なにかあったの？」

もっと活発に集まっていた頃は、わたしの家がよく選ばれていた。わたしの家は大学生の一人暮らしにしては広くてキッチンもしっかりしていて、集まりに適していたから。断る理由もなかったし。

……でも、いまはわけが違うんだ。なにかあったのかと聞かれれば、答えにくいものではあるんだけど。

「ちょっと家は、わたしの一存じゃ決められないから」

声にしてすぐ、しまった と思った。なんでこんな言い方しちゃったんだ、こうちゃんも驚いた顔してるし、いやそうだよな。恋人もいないのに家に誰か住んでるような言い草だったもんな。うわー、失敗した。

「……えっと、誰と？」

わたしの しまった が滲み出ているであろう表情に気を使ったのか、遠慮気味に聞いてきた。

「エ？……っ何の話？」

あまりの誤魔化しきれてなさに自分でも笑ってしまう。こうちゃんは察して話を逸らしてくれた。


「ひとつ聞いていい？」

淀んだ空気の中、適当な会話をしてやっとお昼ご飯を食べ終え、席を立とうとすると、こうちゃんが引き止めるように口を開いた。

「この間LINEしてた人？」

わたしは彼を見ずに小さく頷いて、その場を去った。……ごめん、この生活が終わったら全部話すから、あとちょっと待ってて。

違和感が、ぶつかりあう→←かけずに済んだ迷惑と、なぞときの人

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す