あなただけのときめき ページ17
山本は、真っ赤に染まっているであろうわたしの顔を見て勝ち誇ったように笑みを深める。
「好きな子には特別優しくしちゃうんだよね、やっぱり」
顔がさらに熱くなる。既にこれ以上ないだろうというほどに熱が集まっていたはずなのに。山本はそんなハリボテの限界を簡単に超えさせてきた。そして、まだまだわたしの顔は林檎のように真っ赤になっていく。
「好きだから、よーく見ててなんだって気付けちゃうし」
「好きだから、こっち見てほしくてこんなこともしちゃうし？」
こんなこと、そう言いながら彼は掴んだままのわたしの右手を揺らした。甘い言葉が並べられている間、わたしは声を漏らすことすらできず、ただただ困惑して、ただただ自らの顔の赤さを更新し続けるだけだった。
「聞いてるの？」
そう問いかける瞳には、彼の純真さが滲んでいた。
そうなると、今までの不信感は本当に全てわたしの想像だったわけだ。女たらしだと勘違いして山本の先に見える女の子ばかり気にしていたのが馬鹿らしくって仕方ない。色んな子を惑わせているだろうと思っていた彼の大胆な優しさは、なんとわたしにばかり向けられていたというわけで、嬉しさもじわじわと押し寄せてくる。
極めつけに、その嬉しさの意味を司る自分の感情にも気付いてしまって、とにかく、いろいろな方向へと感情が昂っていて、泣いてしまいそうだった。
「……顔、真っ赤過ぎ」
わたしが必死に涙を堪えているというのに、彼は拘束したままの右手からフォークを外し、ゆっくり組み替えて、きゅっと握った。彼の指がぴったりとわたしの指の間を支配していく。
指先から、彼のあたたかさが流れ込んでくるような感覚が、わたしを強く揺さぶった。
そして、山本の魅力を詰め込んだ笑顔が、わたしを刺した。見たことがないくらいに綺麗で、まるで愛おしくて堪らないものを見つめるような、熱い熱い眼差しだった。それが、自惚れじゃあなさそうなことは、わたしでもわかる。
その証拠に、彼は口角を上げたまま、口を開いた。
「伝わってると思うけど、僕はAが、」
夢の世界できらきらと漂っているような、そんな心地だった。
『落ちた先の煌めき』end
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作者名：ぶっく。
| 作者ホームページ：
作成日時：2020年12月29日 21時
