検索窓
今日:4 hit、昨日:24 hit、合計:53,667 hit

合縁奇縁ミッドナイト _ini ページ10

「……Aさん?」

俺が深夜のコンビニで声を掛けた相手は、簡単に言えば友達の、彼女の、友達。まあ、薄い縁の知り合いだ。

「え」

だから、たまたま見かけたくらいでわざわざ声を掛けてしまい、自分でもびっくりした。もちろん、彼女もすごく驚いているようですこしズレた眼鏡を直しながら目を細めて俺を見つめてくる。

「わ、やだっ、乾くん?」

そしてようやく認識したらしい彼女はパッと顔を隠した。

「え、ごめ、俺何かした?」
「何かしたっていうか、わたしが何もしてないっていうか」

彼女の言っていることがよくわからず、彼女の手元に視線を移した。買い物かごの中に入っているのは数本の缶チューハイとチータラとサラミ、ポテトチップスに、……

「あ、あんまり見ないで」

顔を隠していた手をかごの前にずらした。確かに、人が買おうとしているものをじろじろと見るのは失礼だった。

「そ、だよね。ごめん」

反省した俺は、見えるようになった顔に視線を移す。まあ、女性の顔をじろじろ見るのだって先程と変わらないくらい失礼だろうけど、変に視線を逸らすのもおかしいなと思ったのだ。

そうして自然と、沈黙が生まれた。でも俺は特に気まずさなんて感じていなくって、マスクを直しながらやっぱり彼女の顔を見つめていた。

マスクと眼鏡で顔はほとんど見えないけど、可愛らしい雰囲気は滲み出るもんなんだなあ。


「……引いた?」


なんて、誰かに心を覗かれたらきっと変態判定を食らってしまうだろうことを考えていたら彼女が怯えたように首を傾げた。

「えっ、ええと……何に?」

前に会ったときは、もっと明るい印象だった。そりゃあ昼間と夜中じゃわけが違うだろうけど、それにしても何にビクついているんだろう。

「すっぴん眼鏡にジャージで髪も適当で、ひとりで深夜にお酒とおつまみ買い込んでることに、」

Aさんにそう言われて中学名か高校名の入ったダサくて所々擦り切れたジャージに身を包んでいることに気がついた。
化粧をしていない顔も、自然にまとめられた髪も、眼鏡も、俺にはむしろ良い要素として映っていたことにも。


「待って、ほんとに恥ずかしい」


そう言ってもう一度顔を覆う姿を見て、胸の奥がきゅんと鳴った。


待って、待て落ち着け、俺。どう考えてもツボおかしいだろ。



だらしない姿まで愛せるのは素晴らしいことだけど、だらしない姿から愛し始めるのは、さすがにちょっと、ちょっと……


「Aさん、帰り送ってくよ」


そんなふうに考えたって、この気持ちはもう止められないのだ。



『合縁奇縁ミッドナイト』end

破綻する犯行声明 _izw→←捨てられる夢になりたかった _kwmr



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (121 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
340人がお気に入り
設定タグ:QuizKnock , QK , クイズノック   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ぶっく。 | 作者ホームページ:   
作成日時:2020年12月29日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。